先日、2021年4月時点での保育園の入園情報のデータが出揃い、東京都の待機児童が大幅に減少したことが分かった。
東京都の待機児童
主要な数字は以下のとおり
・就学前児童数:619,296人(前年比▲12,808人)
・保育サービス利用児童数:323,703人(前年比+3,145人)
・認可保育所定員:313,364人(前年比+10,271人)
・認証保育所定員:16,718人(前年比▲1,354人)
・待機児童数:969人(前年比▲1,374人)
まず、就学前児童数は減少している。長期的なトレンドとしての少子化とコロナショックによる一時的な婚姻数の減少、産み控えなどが影響しているものと見られる。
東京都の就学前児童数も大きく減ったため、これが保育サービス利用児童数の増加を一定程度抑えた形になっている。
・日本全体の出生数840,832人(前年比▲24,407人)
・日本全体の婚姻件数525,490組(前年比▲73,517組)
共働き化が進んでいるため、就学前児童数に占める保育サービス利用児童数の比率は長期的に上昇傾向である。
今後もこの比率は上昇していくだろう。
・保育サービス利用率 2016年:41.3%→2018年:45.8%→2021年:51.9%
また、コロナの中で保育園の入園を遅らせたという話も普通に聞くので、保育サービス利用児童数は一時的に抑えられていると考える。
とはいえ、保育サービス利用児童数は+3,145人なので利用率の向上による効果の方が大きかった。
東京都は認可保育所の新設、既存施設の定員拡大を行い、認可保育所の定員を+10,271人拡大。
認証保育所の定員は減少したが、そのうち一定数は認可保育園への鞍替えを行っているものと見られる。
トータルしても、定員は9,000人程度増加している。
定員の増加が9,000人程度、保育所利用者数が+3,145人なので待機児童が5,000人くらいは減るかというと地域のミスマッチがあるのでそういうものでもなく、
待機児童数の減少は1,354人となっている。ただ、それでも大きな進歩である。政府、東京都、区が取り組んできた成果が出て来ている。素晴らしいことだと思う。
23区の待機児童
23区の待機児童も減少しており、288人(前年は989人)となっている。全ての区で待機児童が減少している。
待機児童がもともとゼロ(6区)・・・千代田区、港区、目黒区、杉並区、豊島区、世田谷区
待機児童がゼロになった(6区)・・・新宿区、大田区、渋谷区、練馬区、足立区、葛飾区
待機児童がいるが数人(3区)・・・文京区、江東区、品川区
待機児童が多い(8区)・・・中央区、台東区、墨田区、中野区、荒川区、板橋区、練馬区、江戸川区
この待機児童の定義について、インチキで実態よりも小さく見えているという説もある。
認可保育園に入れなかった子供のうち、通える園があるのに特定の園を希望して待機している→非待機
認可保育園に入れなかったので仕方なく認証保育園に通わせており転園希望している→非待機
保護者が育休を取得しており復職の意思が確認できない→非待機
確かに、勝どきで保育園が空いてないから待機しているのに、人形町が空いてるから待機児童ではないなどと言われたらイラッとくるところ。
一方で、認証保育所に希望して通わせている人もいるし、復職したくない人もいるので定義は難しい。
港区の事例だと認証保育所と認可保育所の差額助成があったりするので認証保育所希望者も多い。
つまり、区によって状況は違うのだが、横比較するためには一定の定義を置かなければならない。
住民の立場で実質的な待機児童を見る指標については、ゼロ歳児4月入園時の最低ポイントと期中における保育園の空き状況が参考になる。(後述
待機児童が多い区
23区の中で待機児童が最も多いワースト3は、中央区:85人、江戸川区:49人、板橋区:35人となっている。
保育サービス利用児童に対する待機児童の率で見ると、中央区:1.49%、墨田区:0.41%、荒川区:0.37%となっている。
つまり、中央区が突出して状況が悪い。あれだけボンボンタワマン建ててれば仕方ない。
むしろ、その中で待機児童を半減させたことは素晴らしい。(中央区の前年の待機児童は202人)
これからパークタワー勝どきや選手村が引き渡されたら23区最悪の状況を改悪させてしまう恐れはある。
中央区の待機児童数が他の区と比較して突出して悪い理由として、小規模保育室の整備に消極的で認可保育所にこだわっているということが指摘されている。
23区の中でも際立つほどタワマンをボンボン建てたいなら、小規模保育室を整備して0−2歳児の枠を大幅に増やし、まずは23区最悪の状況を脱するべきだと思う。
待機児童ゼロとは
さて、港区では待機児童がゼロの状態が継続している。これはどういうことかというと、ゼロ歳児4月入園であれば選ばなければ100%入園ができるということである。
また、実態として待機児童ゼロのみならず、さらに枠があり、枠が余っているため、期中での転園や入園も可能となっている。人気園は厳しいが。
入園競争が激しくないということは、不毛な入園ポイント稼ぎのために無理に早く復職するとか、認可外でポイントを稼ぐとかは不要だし、兄弟を同じ園に入れるなどは確実にできる。
素晴らしいことだが、まぁ当たり前とも言える。小学校だったらこんな悩みはない。
今回、待機児童ゼロになった区が12区に増えた。
これらの区はこれから貯金を作る(さらに枠を増やして余裕を持つ)ことで、いざ再開発が行われて一時的に保育園がタイトになった際も吸収することができる。
この余裕がどのくらいあるかについては入園時の最低点と各区の保育園の空き情報をググると出てくる。
入園時の最低ポイントが40点未満の保育園がたくさんあれば安心できる。
同じ待機児童ゼロの区で比較しても受け入れ余力がゼロでカツカツのところと、各園が数人から数十人受け入れ可能な区がある。
白金高輪や芝浦で大規模なマンションが供給されるが、この貯金と新設される園で吸収し切れるはずである。
こうなってくれば、新築マンションを買っても保育園を心配する必要がなくなる。素晴らしいことである。
また、保育は量が足りてはじめて質の議論になってくる。待機児童ゼロを達成した区では保育園に関する議論が全く変わってくる。
どのように量を増やすかから、どのように質を高めるか?に変わっていく。政策の方向性が全く変わる。
また、保育園が余っている状態であれば質の低い保育園から良い保育園へ移動することも一般的になるので、保育の質について緩やかな競争が生まれる。
日本はコロナからの復帰に時間を要しており、婚姻数、出生数も当面は少ない状態が維持されるものと想定される。
この状況の中で保育枠の増加を進められれば短期的に23区全てで待機児童ゼロの達成も可能である。