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千代田区長への新築マンションの未販売住戸優先販売問題

コロナの大騒ぎで風化気味だが、界隈でちょっとした話題になった本件についてまとめてみた。

 

NHKの報道

 

3月6日、NHKが「高級人気マンションの一般販売ない部屋千代田区長が所有」と報じた。

 

千代田区の石川区長が三井不動産のパークコート三番町ヒルトップレジデンスの一般未販売の部屋(事業協力者住戸)を抽選なしで購入していたことが明らかとなった。また、石川区長はこれまでに新築の高級マンションを5軒取得し、3軒を転売して利益を得ているという。要はマンション転売屋である。

 

取得した物件のデベロッパーは住友不動産三菱地所レジデンス、大京などであったと報じられている。

当然、これらの物件についても似たようなことが行われていたのではないか?との疑惑がある。

 

実はNHKの報道前から共産党が本件を追及してきており、千代田区長は「失礼だ!」などと逆ギレしたり、はぐらかしたりしてきたが、

NHKが報道したことで一気に注目が集まり逃げられなくなった。また、共産党以外の議員も対応せずにはいられなくなった。

 

共産党は百条委員会の設置を提案し、共産党自民党、立憲系会派などの賛成多数で設置が可決された。百条委員会とは、猪瀬知事などが追求された人民裁判のようなもので、真相究明が目的というよりも、千代田区長を徹底的に攻撃して政治生命を終わらせるものであると思う。

 

なお、石川区長を支持してきた都民ファーストの会は百条委員会の設置の議決を退席。おそらく、本件は区長と都民ファ潰しのために共産党自民党がマスコミにリークしたのだろう。

 

 

本件の問題点

 

デベロッパーが一般未販売住戸を設けることや、事業協力者でなくても、お得意様に優先販売すること自体は商慣習として問題がない。

問題は、「千代田区長が購入したマンションが千代田区の許可を受けて高さ制限が緩和されており、その決裁権者が千代田区長だった」ことである。

 

 

つまり、千代田区長は自らの職権を利用して、私的利益を得たのではないか?という疑惑が持たれる。

また、デベロッパーは千代田区長に利益を供与した見返りに便宜供与(容積率緩和=戸数増加による売上増加)を得たのではないか?という疑惑が持たれる。

しかも、区長は5軒も取得しては転売していることから、他のデベロッパーに対しても同じようなことを行っていたのではないか?という疑惑が持たれる。

 

なお、千代田区長は現在のところ以下のように述べている。

・マンション購入の資金は出したが、マンション購入は家族が行ったから経緯は知らない。

・マンション購入はデベロッパーから打診されたから自分から売ってくれと頼んだわけでは無い。

・価格は妥当だった。(不当に安く買ったわけではない)

・未抽選とは知らなかった。

 

少しマンションに詳しい人なら、『未抽選とは知らなかった』というのはまぁ嘘だとわかるだろう。

 

 

デベロッパー側の問題点

 

職務上、公務員の付き合いがある人は、「公務員に対しては一般企業の人と同じような付き合い方をしてはならない」と学んだことがあるだろう。

宴会をやれば必ず折半しなければならないし、お歳暮など贈答品を贈ってはいけない。お車代などを支給してはいけない。

ゴルフや旅行はダメ、出版の監修をしてもらうのもダメ、謝礼を渡すのはダメなど、細かい取り扱いがある。

商品のサンプルやノベルティ(カレンダーなど)はギリギリ良いと言われるが、お弁当やお菓子は駄目な場合もあるなど、公務員との付き合いはとにかく気を使うのである。

 

 

収賄罪に該当しないよう、民間企業は公務員の職務行為に対して金品などの対価を払ってはいけない。

また、職務と密接に関連する行為(口利き等)についても対価を払うことが禁止されている。

ここで、「対価」とは金銭のみならず、公務員が「対価」と感じるあらゆるものである。

一般的には価値がないような行為であっても、公務員が対価と感じれば、見返りを求めることができるからである。

特に、公務員の許認可が大きな利益につながる不動産業については、より厳格にコンプライアンスの遵守を求められており、担当者レベルでは適切に運用されていると思う。

 

 

さて、コンプライアンス研修で質問を受けたとして答えを考えてみる。

 

『マンション転売屋として有名な千代田区長に対して、倍率がつく人気マンションの一般未販売住戸を、無抽選で販売する行為は、

収賄罪で禁止されている「対価」と判断されるか?』

 

 

・・・外形的には確実に対価と判断されるであろう。マンション転売屋に聞いてみたら良いが、利益供与もよいところ。垂涎の条件である。定価販売であっても。

 

確かにそもそもこれが『贈収賄罪』に当たるのかどうかは判断が分かれるところであろう。タダでマンションを贈答したわけではなく、定価で販売しただけである。

 

ただし、転売して数千万円の利益を得ているのであれば、未公開株を渡すのと経済的な効果は似ている。

定価で渡したから賄賂ではないと言っても、通用しないのではないか。

逆に、これが問題ないと判断されるならこのスキームでいくらでも許認可権者に堂々と利益供与でき、便宜供与を引き出すことができてしまう。

 

本件に関して、三井不動産は、千代田区長やその親族から購入したいと打診されても、千代田区長が容積率を緩和した物件だけは、キッパリと購入をお断りするべきであった。

千代田区長は、「デベロッパー側から購入を打診された」と主張しているが、事実なら最悪である。

 

外形的に便宜供与の対価に利益供与を行ったと疑われるような行為であり、デベロッパー自身だけなく、千代田区長の立場も危うくする行為である。

デベロッパーはアホではないので、組織としての判断で、容積率緩和を受けた物件の容積率を緩和した当事者に販売したわけである。

しかも、一般未販売住戸を無抽選で。

 

三井不動産グループのコンプライアンスのページを見ると、以下のように書いてあった。

 

腐敗防止

(1) 贈収賄の禁止および接待・贈答
公務員などに対し、不正な利益供与を禁止しています。また、取引先や関係先などとの間であっても、節度を超えた接待や贈答などを行ったり、受けてはいけないこともルール化しています。また、贈賄防止にかかる取り組み体制や遵守すべきルールを定め、贈賄行為を未然に防止することを目的に「贈賄防止に関する規程」を制定し、実行しています。

 

・・・本件のポイントは、三井不動産は『不正な利益供与』をどのように定義するのかということ、それが社外で通用するか?ということであろう。

 

百条委員会では、真相究明にはあまり関心がなく、千代田区長に恥をかかせて首をとることに全力投球するのであろうが、そんなことしなくても千代田区長の政治生命はとっくに終わっている。

 

マンションファンとしては、『不正な利益供与とは何か?』という定義をぜひ確認してもらいたい。許認可を受けた物件の未販売住戸を販売することは不正な利益供与なのか?ギリギリセーフなのか?

 

 

千代田区長側の問題点

 

当然ながら、デベロッパーのみならず千代田区長側にも問題がある。

 

国家公務員の場合は、(国家公務員ではないが同様であると思料)倫理規定、倫理行動基準の中に、利害関係者に対する禁止行為が明記されており、その中で、「利害関係者から無償で役務の提供を受けることを禁止する」と書かれている。

 

「無償で役務の提供を受ける」とは、通常であれば送迎や自分の仕事を手伝わせるなどの行為であるが、「自然な状態であれば無償では行わない特別なサービスを相手に行わせること」であると考えられる。

 

つまり、定義が曖昧であり疑惑を持たれやすい。通常、許認可の相手から高額なモノを買うなどということは、疑惑を持たれないよう厳に慎むべきであろう。知らないうちに通常行われないサービスをうけるリスクがある。

 

そんな中で、許認可を行った物件自体を買うなどというのは、脇が甘すぎて呆れてしまう。千代田区長は元公務員であるから、このような規制には精通していたであろう。

 

百条委員会はこのへんを指摘して、千代田区長がいかに非常識なことをやったのかを徹底的に追及して吊し上げるのであろうが、正直なところ千代田区長の政治生命はもう終わっているし、年齢も高齢だから放っておいても次はなかったと思うのでどうでもいい。

 

それよりも、本気で本件を追及していくとデベロッパーと許認可を与える者の不適切な利益供与、便宜供与の実態が明らかになってしまうおそれがある。リークをしたと思われる自民党自体が一番やっていそうなので、かなり思い切ったことをやったなと感じる。

 

本件について、通常の不動産のVIP販売だから問題ないのではないか?という意見を見たが、おそらく民間企業で対公務員の対応をやったことがない人なのであろう。

 

許認可権を持つ国家公務員に対する付き合い方の規制の厳しさを知らないのだろう。千代田区長はそのへんにいる金持ち爺さんではないのだ。

 

なお、千代田区は「区職員」が事業協力者住戸を購入していた場合、「倫理規定違反に該当する」と議会で説明したのことである。

 

区長だから組織内から指摘されていなかっただけで、千代田区の職員は、千代田区長による権力私物化、マンション転売には迷惑していていたのであろう。

 

外形的にどう見てもアウトな行為を行う区長を部下として必死に庇わなければならない役人の身になると、同情してしまう。

 

(以下は7月29日追記)

百条委員会委員会と刑事告発

 

百条委員会では、区長は「事業協力者優先住戸として、無抽選と知りながら購入したのか」について追求されている。

つまり、デベロッパーから特別扱い(利益供与)を受けていることを認識しながら購入したのか、ということだ。

 

区長は、「知らなかった。事業協力者でないことは知人経由でデベロッパの販売会社に確認した。」と回答した。

ところが、議会がデベロッパに確認したところ、「そのような事実はない」という回答だったという。

また、知人とは誰なのかについて区長は黙秘。これによって、区長は偽証を行ったと批判されている。

 

千代田区議会は7月27日、百条委員会での偽証について、区長を東京地検刑事告発する議案を賛成多数で可決した。

 

 

12万円のバラマキ提案

 

区長は、このタイミングでなぜかコロナ対策として区民一人当たり12万円をバラまくことを議会に提案した。

議会が反発すれば、先決処分で独断先行することも仄かした。

従前、区長は「このようなバラマキは効果が薄く、一時的なものでしかない」として批判的だったため、なんらかの意図が感じられる。

議会は政策を審議することとなったが、「疑惑隠しではないか」「どのような正当性があるのか」など議論紛糾してすぐに休憩になってしまった。

 

 

法的根拠がない解散通知書

 

区長は、予算委員会の休憩中に突然「議会の解散通知書」を議長に提出したが、法的根拠がないとして受け取りを拒否された。

(議会を解散できれば、12万円のバラマキを人質に面倒な自民党区議を一掃できると考えたのだろうが、受取拒否)

 

そもそも、区長は議会に不信任案を可決された場合、解散をすることができるが、不信任案は決議されていない。

また、不信任議決とは重く、議員数の3分の2以上の出席、4分の3以上の賛成などの厳しい要件がある。

 

区長は、「百条委員会での偽証に関する刑事告発の決議は、実質的に不信任案みたいなもんだから解散」「これで百条委員会も解散」というロジックだが、そんなものは通るはずがないし、そもそも、自分が刑事告発されていることを利用して解散しようなんてイカれてるとしか思えないが、傲慢で利己的に考えると、このように法令解釈できてしまうらしい(本人的には。役所の中の人は呆れているだろう。)。

 

 

本件の真の問題点

 

区長が12万円バラマキや権限ないのに解散通知など、墓穴を掘りまくり、場を荒らしているので、本件の問題点がぶれてしまっているのだが、本質的には、「許認可権を持つ公務員に対して、利益供与(本人が利益と受け取るような通常行わないような特別扱い)をすることは妥当なのか」という議論であった。

 

仮に、デベロッパが許認可権者をVIP扱いして事業協力者住戸を無抽選販売することが妥当ということになると、未公開株を買わせて実質的に賄賂を送る行為が合法になってしまう。

 

お墨付きがとれれば、デベロッパ容積率の緩和を勝ち取るため、このスキームを使って賄賂を送りまくるだろう。容積率緩和による経済効果は数億円から数十億円、数千万円の賄賂など安いものである。これについて、セーフ・アウトの線引きをしっかりして、区長とデベロッパに責任を取らせることが肝要である。

 

収賄罪の線引きがはっきりしないので、区長はじめ、デベロッパにタカりたい人たちがVIP販売を求めてきても、デベロッパは断れない。また、デベロッパ自身が自社の利益のために購入を持ちかけることも制限できない。

 

個人的には、デベロッパが許認可権者及びその家族に許認可を受けた物件を取得させるなどあり得ない行為であると思う。どう見ても、外形的に贈収賄罪を疑われる恐れがある。

 

千代田区長なんて年齢的にもどうせ次はないし、今回のスキャンダルで政治生命は終わっているからどうでもいい(でも、千代田区民のためにはしがみつかずにさっさと逮捕投獄されて欲しい)。

 

それよりも、デベロッパによるVIP販売の商慣行が妥当なものか、贈収賄罪の回避(実質的な賄賂)に使われていないのか、実態解明に興味がある。

 

本件は千代田区議会が主導して追及をしている。都民F系の区長に対して、自民党が追及する形である。ただ、議員は調査のプロではないので、本来は監督官庁や特捜マターであるように思える。

 

 

更なる疑惑

 

容積率緩和の見返りにマンションを優先購入したのが事実として、なぜ区長はこうしたことを始めたのだろうか。

普通に考えて、区長になってはじめて開始した訳ではないのではないか?どこにその最初のきっかけがあったのか?

これについて、デイリー新潮が興味深い記事を書いている。

 

<ミッドタウン日比谷を巡る区の所有地の無償貸与問題>

・今後、火を吹きそうなのが東京ミッドタウン日比谷を巡る問題である。

・18年に三井不動産が開発したこの複合施設では敷地内に区道が通っており、そこを広場として整備している。

・土地は今も区の所有だが、維持管理を担う一般社団法人日比谷エリアマネジメントに無償で提供していた。

・区長は三井不動産とも親しいと言われており、この社団法人の代表は三井不動産執行役員である。

・その広場は2千平方メートルと広大にもかかわらず、向こう20年もの間、無償で区から貸す契約になっている。

 

<都庁職員時代からデベロッパーと癒着疑惑>

・区長は都庁で港湾局長を務めていた当時、1996年の世界都市博準備のため、都市開発の仕事に関与していた。

・当時から不動産業者との繋がりがあった。高級マンションの売買を繰り返していた。

・2001年に区長に就任した後、5件のマンションを取得、3件を転売して利益を得ている。

 

 

つまり、都庁職員時代からデベロッパーと関係があり、職務権限を利用してデベロッパーに便宜を図る代わりに、マンションの優先購入などの利益供与を受けていたのではないか?という疑惑である。となると、都庁職員の問題にもなってくる。

 

百条委員会では、区長の優先購入がどうというよりも、東京都や千代田区の職員とデベロッパーの癒着についても切り込んで欲しいところである。