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テレワークで都心のオフィス・住宅需要は減るか?

テレワーク

 

小池知事が平日は在宅勤務せよと呼びかけている。多くの大企業が原則在宅勤務に切り替えている。

 

想定どおりネット企業の対応が早かったが、金融、メーカー、不動産などのレガシー産業についてもテレワークが原則とされる動きがあり驚きである。

 

在宅勤務できるビジネスなのに、社内要因で、在宅勤務できない会社というのは恥ずかしい反社会的な会社であるという認識が広がっている。

 

・あの電通でも在宅勤務をやっているのに、当社ではできないのか?社員の健康管理をどう考えるのか?

・オフィスで集団感染が発生したらどうするのか?

・休校になったがどうしろというのか?

・なぜ、満員電車で通勤して在宅でもできる仕事をしなければならないのか?

・同業他社や取引先は在宅勤務なのに、なぜ当社はできないのだろうか?

 

もともと、政府はオリンピック期間中の公共交通機関の混雑を緩和するため、テレワークの普及促進を行ってきた。ただ、イマイチ流行らなかった。

 

SIerなどのテレワーク導入支援を仕事にしている会社やリクルートJALなどの先進的な会社は、テレワークによって昭和の労働文化(紙、対面、長時間労働)を破壊して生産性を向上できる可能性に目をつけて、PDCAを回しながらテレワークに取り組んできたが、レガシー産業は育児中の女性に限るなどのケチな運用をしていた。

 

そもそも、現代の職場環境においてオフィスにいかなければできないという仕事は減っている。人事部や情シスは、一刻もはやくテレワークを導入してPOCやPDCAを開始したいのに、中間管理職層が反発するという構図が多く、要は、テクノロジーと昭和の労働文化との戦いが生じていた。手書きの履歴書やFAXみたいなものだ。

 

テレワークは、まず全社員がやってみることで誤解が解けて組織に浸透する。しかし、人望のない管理職が反対するので日本企業はテレワークのトライアルをできずにいた。

 

ところが、コロナで出社禁止になり強制的に全ての社員が在宅勤務に切り替えられた。これは衝撃的なトライアルとなった。

 

担当者も管理者も有能な人とダメな人がハッキリ分かれた。やることの決まっている担当者は所詮、締め切りまでに仕事を完了させるしかないため、ダメな人でもさほど変わらない。有能な人の生産性がすごく伸びただけだ。

 

巧拙の差が大きくついたのは管理職である。対面による監視やマイクロマネジメントができなくなったが、人望がないので部下が報告をしたがらない。そこで人間不信になってさらにテレワークなのにマイクロマネジメントをしてしまう。

 

結果、チームは個人単位に分断され、バラバラになり生産性が低下した。これは外から見ているとすぐにわかる。上司は成果がでない理由をテレワーク制度や部下のせいにする。ツイッターでも部下がダメだとイキリ散らしてた人がいた。部下からもマイクロマネジメント野郎に対して不平不満が出てくる。大抵の場合、問題は上司側にある。

 

一方で、優れた上司(若くてテクノロジーに精通した人が多い)はテレワークがなんたるかを理解していた。対面ではないため、情報共有や緊密なコミュニケーションがなによりも大切である。

 

そこで、信頼関係、心理的安全性が確保されていなければ、ネガティブな情報が出てくるのに時間がかかってしまう。進捗に問題がある場合に、相談してくれなくなる。テレワークで上司の役割はコマンダーからプロデューサーに変わった。それに理解できずに指示命令を行って報告を求めると失敗してしまう。

 

さて、実際にやってみた方は分かると思うが、テレワークの効用は非常に大きい。通勤時間がないから体の負担が小さい、睡眠時間も伸びる。スーツを着なくていいからリラックスして仕事ができる。静かな図書館に篭って仕事をしているのと同じであるため作業が捗る。作業の中断が入らないのも大きい。こんな恵まれた環境で生産性があがらないわけがない。

 

また、副次的な効果も大きい。通勤時間がないため朝早くから始業できる。帰宅時間が早くなるため家事が捗る。女性社員は時短勤務せずにすむようになる。子供が熱をだしても保育園にすぐに迎えに行ける。病み上がりで出社しなくてもすむなどなど。

 

今回、多くの社員がこのテレワークを体験した。今まで食わず嫌いしていた人も。もちろん課題もたくさん見つかったが、多くの場合、生産性がほとんど変わらないことにきづいたはずだ。

 

コロナが終息してから、すべての社員が週5日、オフィス勤務に戻るかというと戻らないだろう。テレワークとオフィスワークを組み合わせて業務を設計するようになっていくと考えるのが自然だ。

 

BCPの観点からも、いつまたコロナのような事態になっても対応できるようテレワークを日頃から運用しておくことが求められるようになっていくだろう。

 

 

働き方改革とオフィスの姿

 

コロナショック前から、働き方改革の流れを受けてオフィスの移転や改修が流行した。昭和のオフィスから脱却して現代的なオフィスへ。固定席や島型対向レイアウトを廃止して、無線LANフリーアドレスが導入された。

 

働き方を変えたくても昭和のオフィスでは無理である。オフィス移転を機に、業務プロセスを変えようという動きは必然であった。

 

紙を減らし、固定席を減らし、オープンな会議スペースを増やす。近年オフィスを移転した会社は、程度の差はあれ、このような考え方でオフィスを設計されている。

 

昭和のオフィスからの脱却は要は個人のスペースを減らすということになる。この中で一人当たりのオフィススペースを削減することで賃料を減らすことができる。オフィス移転のコンサルは、業務の電子化による生産性向上と賃借面積の削減によるコストダウンを提案する。生産性は測りづらいのでペーパーレス化の程度や社員満足度で判断する。賃借面積や削減した賃料は分かりやすいのでオフィス移転プロジェクトのKGIにされやすい。

 

 

テレワークで都心のオフィス需要は減るか?

 

テレワークの普及は不可逆的なものであり、オフィススペースの削減の流れを加速させる要因だろう。

 

オフィスをフリーアドレス化すれば、全社員の席を確保する必要ない。休暇や外出やテレワークしている人の分の席を減らすことができる。これによって必要なオフィス面積が減る。

 

ただし、オフィスのフリーアドレス化は簡単ではない。基本的にはオフィス移転のタイミングで行う。したがって、あらゆる会社で一気に進むわけではない。昭和のオフィスを使いながら改装するのは大変だ。事例がないわけではないが少ない。

 

今後オフィスを移転する会社から、テレワークとオフィスワークの複合を前提としたフリーアドレスオフィスへ変化してくだろう。この中で、オフィスを置く場所の再考や面積の縮減が続く。

 

これは趨勢的な動きであるため、長い目では職住近接のできない昭和のオフィスエリア(丸の内など)は過去のものになっていくだろう。しかし、前述したように一気に進むわけではない。

 

テクノロジーの発展とともに、オフィスでしかできない仕事はどんどん減っていく。

 

デベロッパーはオフィス街の魅力を維持するには、オフィスでしかできない体験を増やしていけなければいけないだろう。

 

Googleなどが超快適なオフィスを作るのは、出社しなくても仕事ができるが、出社して他の社員と交流して欲しいからである。アメリカではそれでも出社しないエンジニアも多いのだが。

 

 

テレワークで都心の住宅需要は減るか?

 

テレワークは不可逆的な流れで浸透していくだろう。

 

人間、一度便利なものに慣れると元の不便なものには戻れないのだ。テレワークの自由さに比べると、満員電車に乗って、スーツを着て、固定席のオフィスに出社するなど前時代的すぎて苦痛である。たまにならいいが、毎日はもはや無理だ。

 

また、BCPや女性活躍などの反対されづらい意義もある。コロナのおかげでトライアルもして、生産性はほぼ変わらないことが明らかになった。

 

それでは、テレワークがどんどん浸透すると都心の住宅需要は減るか?

 

多少は減るかもしれないが、私は完全なテレワークはさほど普及しないと思っている。

 

週2、3回はオフィスへ出社したり、取引先へ面談に行く必要がある。この場合、都心の住宅の利便性はありがたい。

 

また、午前中はテレワークし、午後取引先に向かうみたいなことも今後は当然可能になる(というか既にやっている)が、この場合移動時間が短くないと正当化しづらいため、オフィスや取引先に近い都心の住宅の価値は残ると考える。

 

テレワークが浸透すると、在宅での勤務環境にこだわる人が増えるだろう。狭い賃貸でのテレワークは地獄である。

 

P&Gの営業マンは在宅勤務するので仕事専用の部屋を用意することを推奨されると聞いたことがある。

 

したがって、通勤アクセスだけが良い都心の狭い住宅の魅力は低下するだろう。駅から多少離れていても良いので広くて快適な環境が求められる。イメージとして、晴海フラッグや晴海三兄弟などは好まれると思う。

 

私もテレワークをするようになって、駅近物件への興味が低下した。週に1、2回しか電車に乗らないのに、駅近の、価格が高いわりに狭くて周辺環境の悪いマンションに住む必要はない。

 

まとめ

・テレワークは不可逆的に普及していくが、完全なテレワークではなく、テレワークとオフィスワークの複合になっていく

・都心のオフィス需要(必要面積)はテレワーク対応(オフィスのフリーアドレス化)とともに緩やかに減少していく

・都心の住宅需要は急減しないが、通勤利便しか魅力のない住宅の人気は緩やかに落ちる

・テレワーク前提で自宅の環境にこだわる人が増える