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高配当株投資の悲劇

高配当株投資

コロナショック前は米国株を中心とする高配当株投資が人気で、「配当金で生活費を稼ごう」とか「配当年収300万円を達成してセミリタしよう」とかそんな感じのブログやツイートが流行していた。

 

高配当投資は自ら銘柄選定やタイミング選定を行うアクティブ投資の一種であり、米国の投資家に人気が出ていた。ファンドがリリースされた時期がよく、インデックスにアウトパフォームしたからである。

 

私は株価が高騰してインデックスの投資魅力が低下していく中で、「配当利回りを見て株を買っていくことは、高値づかみしないので有効なのではないか」と感じた。ただし、実際にヒストリカルデータを調べてみると、都合の悪いファクトがたくさん見つかった。

 

・高配当株投資は再投資が前提。再投資しなければインデックス投資にリターンで勝てない。(再投資してもほぼ勝てない)

・高配当銘柄は高配当しなければ買ってもらえない(株価を維持できない)ダメな銘柄が多い。

・成長企業は配当せずに事業へ投資をするため、高配当銘柄は成熟した会社が多い。大きな成長は期待できない。

 

これらを確認して私は高配当投資を行うのはやめた。自動的に利益確定されるから楽だという説もあったが、短期的にお金を引き出す必要がない以上、毎月配当金をもらっても再投資するのが面倒なだけだし、お金が必要ならインデックスファンドを売却すればよい。

 

 

イキり出す素人投資家

 

コロナショック前の高配当株投資家のイキり具合はどんどん加速していた。減税と好業績で配当はどんどん増えるし、配当を支払っても株価が下がらないで上がり続けるからである。

 

なぜこんなことが起きたかというと、金融緩和で株価がバブルになっていたことに加えて、リスクを取れば取るほどリターンがあったからである。

 

個人投資家は、バランスファンドを売って株式インデックスファンドを買い、株式インデックスファンドを売って日本の個別株を買い、それでもあきたらず、外株の個別株(高配当株だのGAFAだの)を買ったり、レバレッジ投信(3倍3分法とかそんなやつ)を買っていた。そして、それが円安株高局面で、大成功していた。

 

こうした投資家は大抵、リーマンショックの後から投資を始めている。上昇相場の中でどんな株を買っても儲かったので、投資を始めた時期が良かっただけ、運が良かっただけなのだが、運を実力と勘違いしてブログを始めたり、Twitterで資産残高を公開したりしていた。

 

高配当株投資は本来、長期間の株式のリターンとインカムを見て判断するべきものだと思うが、米株が史上最高値を更新すれば、ポートフォリオをアップしてイキリまくりだった。

 

リーマンショック前からインデックス投資をしている古老達はイキった素人投資家達を苦々しく感じており、彼らの投資手法の論理的な矛盾や弱点を指摘したが、有頂天で全能感のある素人にそんなものは届かない。だって、実際に儲かってるんだから。

 

「誰でも簡単に儲けられれる米国高配当投資」みたいな本が出たり、米株投資ブログが乱立したりしていた。私はこうした傾向は危険な兆候だと感じていた。

 

素人がイキリだすとマーケットは天井である。マーケットの神様はイキった素人を決して見逃さない。暴落につぐ暴落で精神的に追い詰めて、「もう二度と投資はしない」と泣きながら退場するまで、徹底的に追い込むのである。そして、彼らが全て退場した後に株価は底打ちして上昇に転じる。

 

これは、イキった素人のリスク許容度が低く、相場が反転するまで精神的にも投資余力的にも持ちこたえられないためである。巨額の評価損に向き合うのは辛い。早く損切りして楽になりたいと考えるのである。

 

実際には株価は上がったり下がったりするものだし、先進国の債務は常に過去最大(つまり、カネの価値がどんどん下がっている)だから、株であれ不動産であれ、自分が買った価格まで永遠に戻らないといういことはほぼない。

 

個別株には倒産リスクはあるが、インデックスならそれもない。したがって、5年か10年くらい放っておけばプラ転する。精神的にそれまで耐えられるのか?という話である。

 

 

リーマンショックの思い出

 

私はリーマンショックの時に同じような動きを見ていた。当時はバリュー投資が全盛であり、個人投資家四季報CDーROMを買って財務スクリーニングをして、誰もが割安な会社を探していた。実際にリターンもよく、多くの投資家が儲かって、バリュー投資ブログを開設していた。

(当時は誰も気付いていなかったが、アメリカ経済がサブプライムローンを使って膨らんでおり、当時の個人投資家も運が良かっただけだった。)

 

バリュー投資とは、市場で割安に放置されている株を買って、長い時間耐えて、妥当な水準に株価が収れんした際に売却するという手法である。

 

これ自体はプロも行うものだ。個人投資家に分析力があるのかは置いておいて、短期的なリターンを求められない個人投資家が有利な点もあった。

 

バリュー投資は長い時間軸の投資のはずが、なぜか資産残高を毎日公開してイキる奴が現れた。それもたくさん現れた。

 

当時はなんとも思わなかったが、今思えば、高配当ブログがどんどん出てくるのと同じで、相場が天井で暴落が近いサインだった。

 

そこにリーマンショックが起こった。リーマンショック発生後の日本は、「そうはいってもすぐに戻るだろ。サブプライムローンは日本経済関係ないし。アメリカは大変だよな。」という対岸の火事モードだった。

 

リーマンショック後、2009年卒の新卒採用も多くの会社が普通に行っていた。最後の大量採用だ。

 

それからどんどん株価が下落して、さらに下落して、さらに下落して、ようやく日本人もヤバさに気がついた。

 

マーケットはオーバーシュートするが、基本的に間違えない。間違えるのはいつだって我々である。

 

バリュー投資家は株価下落に対して買い向かった。バリューの観点からは暴落は絶好の買い場である。

 

ブログには「株価は短期的には下がっていますが、長い目で見ればバーゲンセールですから、バリュー投資のチャンス到来です」とみんなが強気だった。

 

高配当株投資家が「配当利回りが上がってます、バーゲンセールです」と言っているのと同じである。

 

暴落相場や暴騰相場で逆張りは一発退場となる恐れがあり、非常に危険なのだが、過去の成功体験が邪魔して目が曇っている。そのうち戻るはずだ、押し目だと考えてしまう。

 

それから、上場会社がほぼ全社赤字となり、PERが計算できなくなり、バリュー投資している人の資産は半分以下になった。3分の1になったかもしれない。信用をやってる人は追証地獄になった。そうして、バリュー投資ブログはほぼ全て閉鎖された。

 

個人投資家のリスク許容度は本人が考えるよりも低い。バリュー投資家だって、10年持ち続ければ損失を出さずに逃げ切れたのだが、そこまで精神力が持たないのである。

 

今回の下落も同じで、高配当株投資家はほとんどが退場するが、何人かは生き残るはずだ。自分の手法を信じ切れるかどうかだ。そういう意味で、自分の手法が通用しなくなる局面で、手法を信じ切れるのかどうか興味がある。

 

高配当投資ブログを書いている人はリターンの状況と心情をぜひ綴ってほしい。個人投資家が投資手法が通用しなくなり、評価損を抱えたときにどのような行動に出るのか、価値がある研究になるはずだ。儲かったときにだけイキる奴はダサいし恥ずかしい。損したときにこそ真価が問われる。

 

 

最近の動向

 

3月27日、欧州中央銀行はユーロ圏の銀行に対して2020年10月までは配当を実施しないように要請した。また、自社株買いについては中止することを要請した。株主還元を行っていた銀行が今後のコロナ経済の中で倒産の危機に陥り、救済する際に、世間からの反発を防ぐためである。

 

この流れは、欧州だけではなく、また、銀行だけではなく、救済する必要がある大企業(いわゆる大きすぎて潰せない企業)において同じであろう。

 

コロナ後の経済では、まずは企業を存続させることが最優先だ。株主還元だのESGなんていうのは平時のものだ。

 

多くの会社が潰れないようにキャッシュをかき集めている。資金に窮すれば大幅な希薄化を伴う増資もするだろう。株主還元は停止するだろう。

 

さて、こうなってくると高配当投資家は非常に厳しい状態になる。ただでさえ株価暴落局面で高配当株の下落はインデックスよりも大きかったのに、インカムも激減する。

 

ある高配当株投資家は「暴落局面では、株価は下がっても配当はそんなに下がらないはずだから、心の支えになる」と言っていたが、実際にはそうはならないだろう。減配、無配、増資、上場廃止は当たり前の世界になる。

 

暴落局面においては、今まで順調に機能していた投資手法が機能しなくなる。いわゆるモメンタムクラッシュである。そこで強い心で同じ投資手法を5年、10年継続できるか、心折れて退場するか、投資家は岐路に立たされている。