日銀がしれっと金融緩和修正を発表した。これを受けてニッケイヘイキンズは暴落し、住宅ローンは大丈夫か?!と大騒ぎ。
当面の金融政策の運営について
日銀が12月20日に発表した「当面の金融政策の運営について」を見ると
短期金利:日本銀行当座預金のうち、政策金利残高に▲0.1%の金利を適用する。・・・変更なし
長期金利:10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、上限を設けず買い入れする。・・・変更なし
と金融政策には変更なしになっているが、長期金利操作の「運用」において、
長期金利の変動幅を従来の±0.25%から、±0.5%程度に拡大するとなっている。
これを受けて、金利上昇圧力が強い中で、実質的には0.5%までの金利上昇を容認じゃん、YABEEEEEEEE!!!となっている。
ただし、日銀の会見でも金融引き締めじゃないよと言っている。つまり、今後も拡大していくのか、マイナス金利解除はあるのかなどは現時点では不明。
でもま、賃金上昇するまでは金融緩和修正しないぞマンであった黒田総裁が後任の政策のフリーハンドを確保するために変節、妥協したように見える。
住宅ローンへの影響
まず、長期金利の変動幅を広がたとしても上限に張り付くかどうかは不明。むしろ、下に張り付く可能性だってある。
仮に長期金利が上限の0.5%に張り付いたとすると、長期金利に連動するタイプの住宅ローンの固定金利商品を新規に借りる場合は、適用される金利が上昇する。
代表的なのはフラット35で、これは毎月の長期金利にほぼ完全に連動している。
厄介なことに住宅ローンの金利は契約時点ではなく実行時点で決まるので、2年後に引き渡しの新築マンションの適用金利は2年後に決まる。
従って、来月引き渡しの人はその時に長期金利が0.5%に張り付いていたらドンマイという感じだが、今月引き渡しならセーフ。
現時点での影響はこれだけ。つまり、新規で固定金利の住宅ローンを借りる人だけが金利上昇リスクがある(下落の可能性もあるよ)というだけ。
すでにローンを借りた人には影響がない。変動の人にも固定の人にも影響がない。つまり、ほとんどの人にとって関係ない話。
ただ、フラット35しか借りられない人たち、固定金利しか借りたくない人たちというものはいるため、その場合は、金利が上がると借りられる額が減るので、
購買力が落ち、購買力が落ちれば不動産価格が落ちる又は売れ行きが悪化する(かもしれない)と考えられている。
実際に、この動きはあるんだろうと思うが、どの程度金利と直接的に影響するのかは怪しいところ。余力を残して借りてれば、ほとんど影響ないかもしれない。
日銀の今後の動き
報道を見ていると、世間の受け止めは「日銀は長く継続した異常な低金利政策を修正して出口に向かう」「ついに金融引き締め局面が来た」というものだが、これは極端すぎる。
日銀は日本のインフレ率について一過性のものであり、来年には1%台に戻るだろうと見ているし、米国のインフレはピークアウトしたと見ている。
したがって、日本ではまだまだ金融緩和が必要なほど経済が弱いと見ているので、出口に向かうと向かうということはない。
あり得るのは出口ではなくて異常な金融緩和の修正であり、持続可能性を高めること。
このプロセスが金融引き締めに見えるということだが、FRBがガンガン利上げしているように日銀もするわけでは全くない。
となると、短期金利のマイナスは解除するくらいで、0%から0.25%程度?に誘導するんじゃないのかと。
変動金利
変動金利は短期プライムレートをもとに基準金利を決めて、それに各行が優遇金利を決めて貸出金利が決まっているが、短期プライムレートは短期金利をベースに各行が・・・
という説明があるが、詳しいマンに言わせると短期プライムレートを真の意味で理解している人は日本でも村人の数十人くらいに過ぎないという。
ぼくも肌感覚としては、これからどうなるのかはわからんので過去にデータに頼るしかない。
過去のデータで短期プライムレートは株価が暴落しようが暴騰しようが上がっておらず、まぁ短期金利が0.5%くらいになったとて、上がるとは思えない。
金利の先高感が強く、日銀がガイダンスを出してれば別だが、今の環境では日銀は短期金利は▲0.1%で変更してない。
また、各行が優遇金利を縮小するかについては、銀行業の過当競争によって今の過剰な優遇金利となっており、競争環境が変わらないんだから大きく変わらないんじゃねーのと思う。
従って、短期プライムレートは短期金利が相当に(1%とか)上がらなければ上がらないし、上がる兆しはない。
優遇金利も変わらないので、変動金利は大して変わらないんじゃない?という見立て。
また、そもそも、日銀が短期金利の誘導目標を変えるとも言ってない。
マンション価格はどうなる?
今のマンション価格はバブルなのか実力なのかという話だが、利回りの話を聞かなくなり、類似事例の話ばかりをするようになっているので、今の状況は後から見たらバブルだろうと思っている。
日本経済が最後に輝いていた時と言われたりして。。
一方で、異常な低金利が異常な不動産の高騰を支えてきたわけだから、異常な低金利が変わらなければマンションバブル継続すんじゃない?というのがぼくの予想である。
(が、予想は当たらないので、個人的な感想、エンタメにすぎない)
特に、オリンピックでもコロナでも下がらなかったので、金融緩和さえ維持されれば外部環境が悪化しても絶対に下がらないんだ、
弱気な予想が出た時は買い場なんだという強気予想が多い。
・用地、原材料費、労務費が上がってるから下がらない
・買った人は安くなったら売らないから下がらない
・下がったら外国人が買うから下がらない
・供給が減っているから下がらない
といった話もある。それぞれ見ていくと非常にあやしく、後付けの説明に過ぎない感じもあるが、こういう話が出てくるのは、
消費者の信頼感、先高観が強い状態といえる。
一方で、今回の金融政策修正の報道の中でなるほどなと思ったのは、
「本当は金利による影響は小さい(固定金利を借りる人の購買力が若干下がるだけ)が、下がるのではないかという予想を先取りする利益確定等の動きが出て、下がるかもしれない」というもの。つまり、株式市場で言うところの自己実現性である。これはあるのかなと思った。
今回、金融政策の修正は固定金利をこれから借りる人にしか影響がないのに、
「日銀が金融緩和から引き締めへ方針変更」
「黒田総裁は後任者が金融引き締めしやすいよう先鞭をつけたので、これからは引き締め方向だ」
「今回は固定金利の上昇のみだが、これだけで済む訳がない」
「変動金利もじわじわ上がるだろう」
という悲観的で勝手な予想が報じられている。日銀が市場にサプライズばかりするから、緩和継続とか言いながら引き締めするんでしょ?と疑われている。
不動産が下がらずとも、株は下がっているし、来年からリセッションが始まり企業業績が悪化すれば、悲観的な予想をする人も増えてくるだろう。
金利が変わらなければ与信は変わらないのだが、消費者が与信を活用するかどうかはその時の市場環境次第、気分次第、コンフィデンス次第になってくる。
金融政策を決める上では賃金が大事だが、ぼくは来年の春闘の賃上げ率は2.5%以下で、今年よりは若干改善するものの、物価上昇率を下回る程度と予想している。
この予想は結構当たるんじゃないかと思う。少なくとも、3%以上にはならんでしょ。
となると金利上げられちゃ困るので、短期金利はマイナスのままかプラスだが0.25%くらい。
この程度なら銀行の優遇金利で全部吸収することもできるし、金利に転嫁するとしても0.1%程度じゃないのかな。
金利が上がらないから、マンションバブルは継続か、金利以外の要因で変化する(上がることもあるんじゃない?)という感じ。
たぶんね。