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児童手当をめぐるアツい論争

児童手当をめぐって議論が盛り上がってきた。しかし、この問題、めちゃくちゃ根深いので、いくつかの切り口でまとめてみたい。

 

(1)控除から給付という政策転換

民主党政権において、年少扶養控除を廃止して「こども手当て」を支給することになった。

財源を確保できず、当初ぶち上げた額は実現できなかったものの、一時的に、所得制限なしの給付が実現した。

控除の増額の方が経済効果は同じだし政策実施にかかるコストが低いから良くね?という話だが、現金を配った方が支持率が上がるという助平心で控除から給付とられた。

故郷に子供30人いるから30人分支給してと言い出す外国人とかが報じられて、「だから給付じゃなくて控除だったのか」とみんなが思ったりした。

 

この控除から給付の政策転換により、専業主婦や老親の扶養には控除があるのに、子供の扶養に対しては控除がないという謎の状況になって現在に至る。

その後、自民党政権になると子供手当は児童手当と名前を変えたうえで改悪された。控除は廃止されたままなので、高所得者()は実質改悪となり遂には不支給となった。

 

これに対して、ふざけるな!1200万円の制限はおかしい!という声が上がるのは当然である。元々、年少扶養控除だったわけだから。

この辺の経緯を知らずにこの問題を語るのはアホである。扶養控除について勉強すべき。

 

一方で、子供に扶養控除がないのは日本だけ!!と騒ぐのも過去の経緯を知ればバランスを欠いている。

保育園の供給や幼保無償化のメリットはそれ以上なので、全体で見れば悪くはない。

 

児童手当の問題がなぜ盛り上がってしまうのかというと、民主党の政権の成果、象徴だったからということだ。

自民党は野党時代の恨みからこども手当をとにかくぶっ潰したいが、支持率が落ちるのも嫌なので名前を変えて中身も変えて、どさくさに所得制限も入れた。

民主党自民党の政策の違いがあらわれているテーマなのである。コロコロ制度が変わり、結構な損得が変わる子育て層は置き去り感あるが・・・

 

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(2)安倍政権下の子育て支援

民主党政権はお粗末すぎたため、あっという間に自民党政権に戻ってきた。

その後、安倍政権が誕生し、1億総活躍社会、女性活躍推進という文脈で子育て支援に取り組むこととなった。

様々な取り組みが行われたが、まず金を突っ込んだのは保育所の整備であった。

「保育園落ちた日本しね」がバズった。民主党の自作自演キャンペーンだった説があるけど真相はわからない。

 

当時は待機児童が深刻化しており、高所得者()ほど優先順位が低かったため、所得の高い人は相当な悲壮感があった。

認可外に預けてポイントを稼ぐのが流行した。ひとり親の方が優遇されるから離婚したみたいなネタが流行した。

認可外保育園も高額で、20万円とかだったので、そこに2人預けて、時短で給与カットされて働いてたら何のために働いてるのかわからん状態に。

また、保育園に入れても高所得者()ほど保育料が高いという嫌がらせがあった。

その後、10年かけて保育園が増加し、コロナで出生が減ったため、待機児童は多くの地域で改善した。

 

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保育園に入れるようになってよかったと思っていたら、なぜか「幼保無償化」が打ち出せれ、3歳児以上の保育料は無料になった。

3歳児以上は保育料が安いとはいえ、人数が多いためとんでもない額の税金が突っ込まれたことになる。

これは、やりすぎ感があった。3歳児以降の保育料はそのままでいいから、保育料の高い0−2歳児の親の負担軽減やそもそも待機児童を完全にゼロにする、

保育士の人数を増やして保育の質を高めるなどの方向にお金使った方が良かったんじゃないの?と思われた。

 

これは安倍政権のスタンドプレイというか人気取りのための暴走だったのだろうと思う。

安倍政権は子育て支援働き方改革、賃上げなど多くの功績があり、強権があったからできたことだろうが、たまに独断でわけわからん政策をやったりしていた。

 

(3)扶養控除や児童手当の意義

日本では家族を扶養すると税制上の扶養控除が受けられる。

そもそもこの扶養控除は何の目的で何を支払うためのものなのか、国税のサイトを見ると「扶養をすると扶養に伴う負担が発生するため、控除が受けられる」と書いてある。

扶養をすべき人が扶養をしないと、結局は税金で扶養することになってしまうので、一部応援するから極力、家族でやってくれやという感じだろうか。

 

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子供の扶養に伴って発生するコストは住宅費、教育費が大きく、これは地域によって大きな差がある。扶養控除なり児童手当はこの中で、何をカバーするものなのだろうか。

これについては過去にいろいろな議論がなされているようだが納得のいくものではない。日本全国で統一のものだからそもそも大雑把すぎるし無理がある。

 

児童手当の所得制限をどうするか、児童手当の金額はどうするかの問題は、結局のところ、それで何をカバーすることを想定しているのか次第である。

ここから逃げていては、もっとよこせVS不要だから支給しないという議論が水かけ論になってしまう。

標準生計費のうち、最低限度の家賃、衣服、食費を賄うものと定義して、地域ごとのデータで5年に物価調査を実施して一度改訂されるとか、データドリブンで明確化した方が良い。

児童手当だけでなく、一般扶養控除などもインフレを踏まえればずっと同額というのはおかしい。

 

(4)児童手当の所得制限の廃止

様々な変遷を経て、現在の児童手当は世帯の中に1200万円以上の収入の人がいる世帯には支給されないという制度になっている。

ツッコミどころが満載で、年収1200万円(管理職など)片働き世帯と、800万円(非管理職)2人の世帯だと世帯年収が高い世帯では支給されるという状態。

地域によっては収入の上位1%は不支給、港区では収入の上位55%が不支給など、歪みが生じている。実質的に都会から地方への所得移転になっている。

政策論として、「最低限の給付であるため、高所得であり不要な人には支給しない」ということだが、日本人全員一律で1200万円という基準は全く納得感がないだろう。

自治体とか都道府県ごとに上位X%には不支給というならまだわかる。

 

この所得制限は自民党お家芸だが、党内に財政健全化論者がいて、いちいちケチをつけてくるということだろう。

所得制限は、所得が低い人の支持を得やすいという効果があったのかも知れないが、近年は所得制限に対して風当たりが厳しく、支持率を高めるためにはむしろ所得制限やめた方がいいんじゃない?という話になっている。

 

一度、1200万円で線を引いたら、次は1000万円でええやろとなり、次は「世帯合算年収」1000万円にしたろとなる可能性も高い。

子育て罰とか収入を稼ぐと罰になるとかそいういう議論であり、インセンティブ効果としてもよろしくない。

課税は累進なのだから給付は所得制限なしでいいだろうという考え方で、それが支持率にプラスなら、今後は多少はそういう方向に行きそうだ。

 

(5)少子化対策

少子高齢化のトレンドは継続していて、政府は長いことXXXプランとかXXX対策とかをやってきたが、出生率の低下と出生数の減少トレンドは変わらない。

出生数が100万人を切ったり、80万人を切ったりという節目では大々的に報じられ、理由が分析され、対策がとられる。

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この文脈の中で、異次元の少子化対策をやっていこうとなっており、子供関連予算を倍増させるぞという話になっている。

日本の子供関係予算は欧州に比べるとGDP比で半分くらいなので、同じ程度にしようぜということ。(防衛費の議論と似てるけど、雑)

 

安倍政権下の子育て支援として保育園拡充、幼保無償化が行われ、子育て支援予算は爆増している。

一方で、これは子育て支援(子育てをしやすくする、負担を軽減するもの)であって、出生率を高める政策ではないことに注意が必要である。

子供を持つ家庭あたりの子供の数は長期にわたり変わらないので政策でここを増やすのは厳しく、出生数を増やすためには子供を持つ家庭の方を増やすのが効果的である。

結婚している家庭の中で一定の率が子供を持つので、結婚数を増やすのが最も効果的である。(日本では)

お見合いパーティみたいなのを自治体が開催するのはそういうこと。

 

子育て支援をいくらしたところで、さほど出生数は増えないが、おそらく予算を増やすのは出生数を増やす政策ではなく、子育て支援であろう。

したがって、これにより子育ての負担は軽減されるが、出生数は増えないと予想される。

もしかしたら、もう1人子供を持ちたいなという人の気持ちを後押しすることはあるかも知れないが、全体で見れば少数だろう。

 

つまり、少子化大義名分に、(少子化とはあまり関係ない)子育て支援予算を増やそうとしており、なんか目的と手段が食い違ってるよねという状態。

子育て支援に関しても保育園の無償化よりは、テレワークの徹底の方がより効果的なように感じる。

 

安倍政権下で、様々な子育て支援策が試行されたが、有効だったのは「待機児童の削減」「労働時間の削減」「テレワークの実施(コロナ影響が大だが導入はそれ以前から)」「育休取得者の不利益扱い禁止」であろう。実際、共働き子育て世帯はかなり働きやすくはなった。子供の数は増えないけどね。