テスラ株の下落がニュースになっている。どのぐらい下げているのか。
(指数との比較)
年初来騰落率
・S&P500:▲18.78%
・NASDAQ:▲28.79%
・TSLA:▲60.58%←おい
・TOPIX:▲3.55%
・ドル円:115.11円(1月1日)→137.4円(12月16日)
NASDAQの下落も見事だが、それ以上にダブルスコアの見事な下げ。
2021年は米国株が上がりまくったので日本オワコン、米国株ブームが発生。
米国株は永遠に上がり続けるんだから積み立てせずにレバレッジ投信で一括買いするのが情報強者的なノリだったが2022年は反転。
FRBの利上げによるものであることは言うまでもないが、逆に言うと2021年の株高はFRBの金融政策に踊っていただけということ。
(他のテックとの比較)
年初来騰落率
・APPLE:▲25.00%
・MICROSOFT:▲25.61%
・GOOGLE:▲37.33%
・AMAZON:▲48.09%
・TSLA:▲60.58%
・META:▲65.69%←あ・・・(察し)
時価総額が大きく比較されることが多いテック企業のリターンと比較すると、ぶっちぎりで悪い。
グローバルに信者搾取ビジネスをやっているアップル、法人嵌め込みビジネスをやっているマイクロソフトでさえ25%オフ。指数並みの下落。
広告の比率が高かったり、小売だったりのグーグル、アマゾンも悪い。(アマゾンはリビアン株式の件もあるが)
リアルビジネスで業績が良いはずのテスラが6割安と異常な値下がりとなっている。
(Twitter買収)
元々地合いが弱い所にイーロンが余計なことをやったので、下落が2倍3倍に加速したように見える。
Twitter買収である。Twitter買収は2つの点でやばい。
・テスラの今後のビジネスの計画が遅れること→ファンダメンタルズ悪化
・Twitter買収に伴う巨額のテスラ株の売却が行われており今後も行なわそう→需給悪化
テスラはビジネス上の危機を何度も乗り越えてようやく業績を拡大しながら成長する軌道に乗ったが、多くの課題が残されている。
自動運転の実現(ソフトウェアビジネスの収益化)、車種の拡充(EVシフトが進む中で車種が少なすぎて需要を取りこぼす)などである。
小型のEVも出てない、EVの価格を下げるのもうまくいってない、サイバートラックもまだだしロードスターもまだ。
モデルSやXのPlaidの納期も未定。こうして、ノロノロしている間にBYDが躍進している。
EVの需要は強く、成長機会が多いのに活かせてない。車は急には作れないので、2030年の市場シェアは実質的には2025年頃には決まってしまうとすると、
この大事なタイミングでTwitterで遊んでる暇あるの?という不信が募っている。
米国の規制で大株主が株式売却を行った場合は届出を行う必要があるようで、イーロンが株式売却を行ったタイミングや売った株式数は公表されている。
日々の値動きがおかしい(指数が上げているのに、テスラ株だけ6%安、材料もないのに・・・)と、イーロンが売ってた(後から開示される)ということが、この一年度々発生した。
普通はこうした大口の株式売却はマーケットインパクトを与えないように、長期間かけてゆっくりと行うが、1日のうちにドーンを売って株価を思いっきり下げている。
需給による株価の下落はファンダメンタルズに影響を与えないので長期投資家にとっては買い場と言われるが、あまりにも下落が大きすぎてそこにしか目が向かなくなっている。
また、こんな売りが続くようであれば長期の個人投資家はともかくある程度の短期の機関投資家は恐ろしすぎて買うことができない。
ある投資家は、「イーロンは実質的にテスラ株主から金を引き出してTwitterのために使っているが、テスラ株主はテスラの躍進を期待して、Twitterの再建に興味がない人がいるのに、テスラ株主に不利益を与えすぎている」と言っていて、そのとおりだよなという感じ。イーロン信者は、どんどんやってくれという感じだが、Twitterの立て直しにかかる資金を立て直しが成功しても何のメリットもないテスラの株主が負担している構図になってしまっている。
一応、イーロンは「Twitterの立て直しは長期的に、テスラ株主にも利益を生む」とフォローしているが、今の所、利益を生むとは思えないし、さらに株式を売りそうな気配。
ぼく個人としては、テスラの小型車やFSDの日本への展開をぜひ見てみたい。それをイーロンがやらなくてもいいが、それならCEOを誰かに譲ってほしいところ。株式はできれば派手に売らないで欲しいが、まぁ株主としての自由であるし、投資は自己責任でだから仕方ない。さっさと売却終了宣言してくれないと下がり続けることになるだろう。まぁ、とにかく、テスラに集中するか、誰かに任せるかしてくれやということ。
(テスラの業績)
さて、テスラのファンダメンタルズはどうなのだろう。
テスラは年間150%成長目標を掲げており、それを実現するために、生産能力をどんどん増強してきた。
常に納車待ちになるよう需要を創造し、最新の生産性の高い工場をフル稼働でぶん回して好業績を叩き出すのが経営スタイルであった。
一時期は、量産に失敗するのではないか、工場の稼働率が上がらないのではないかというのが懸念だったが、それは問題ないことを証明しており、指摘されることは減った。
一方、現在投資家が気にしているのは、生産力が需要を上回り工場の稼働率が落ちるのではないか?ということだ。
各社がEVの生産に苦戦して納期が伸びる中で、贅沢な悩みとも言えるが、150%成長を目指す上でも、業績面でも需要が弱まるというのは致命的である。
少しでも需要鈍化の兆候が見えると株価が下落していることからも、今は投資家の注目がそこにあるということだろう。
さて、この需要の弱まりについては、高いシェアを持つ米国(かつ、今後EVシフトが進む)やEVシフトの本尊の欧州市場というよりは、
中国市場が注目される。中国で値下げが行われたから需要が弱いのではないか。中国で納期が短縮されたら、やばいのではないか。といった感じだ。
ただ、冷静になってみると、中国市場で需要が多少減退したとしても、2022年は過去最高の販売台数になることは間違いないし、過去最高の業績になりそうだ。
今後、生産能力を落として利益率が悪化するかもしれないが、それでも各国でのガソリン車販売規制が実施されていく中で、販売台数は増える方向だろう。
ここに対して過剰に反応しているのはどうなのだろうか。
(成長限界点)
より大きな視点で気になるのはテスラの成長限界点(年間販売の成長が止まる販売台数)はどの程度なのか?ということだ。
テスラは2030年に販売台数2000万台のフワッとした目標を立てている。
2021年の世界の自動車販売台数は8000万台。これが2030年までに1億台になり、40%がEVになったとして、4000万台、そのうち50%がテスラ。
特定の市場だけならあり得るかもしれないが、まぁ厳しいので、ぶち上げているだけということ。これはみんな共通認識だろう。
ただ、成長限界点については諸説ある。
仮に2030年に販売台数1000万台、1台あたりの純利益50万円(現在は140万円程度だが安いのを出して下がる)、PER20倍(他社並み、どこと比べるかだが)とすると、
時価総額100兆円と、現在(60−70兆円)から伸びそうだ。
こうなれば言うことなしだが、販売台数500万台だとPERが低下すれば現在の時価総額とトントンになり、販売台数300万円だと時価総額は下がるわけで、「どの程度が成長限界なのだろう?」というのが関心事。それを占う上では中国市場でテスラの市場シェアがどの程度高く維持できるのかということが大事であるという話。
もっとも、車の会社ではなくエネルギーの会社、ソフトウェアの会社に変容する可能性もあり、実際、高い時価総額やPERは自動運転の収益化を前提にしているという話も聞く。本当かは知らんけど。
(BYD)
EVでテスラの強豪となるのは伝統的な自動車メーカーではなく、BYDであると思う。
中国市場の販売台数ランキングを見ているとBYDが圧倒的に成長した。しかも、EV1本足だと不安だが、ハイブリやPHVも出していてソツがなく堅実。
テスラが出せていないセグメントを総取りして新エネルギー車で400万円台以下のシェアが高い、高い月だと7割とか?みたいだ。
このセグメントは儲からないから捨てるという判断もあるだろうが、BYDはテスラと競合する価格帯も出しており脅威である。
BYDは堅実かつ信じられないスピードで事業を拡大しており、業績も良く、バッテリーも自社生産で価格競争力あり。一般車両の海外展開も本格化し始めた。
テスラが強いアメリカや欧州にも入ってくるだろう。さて、Twitterで遊んでいる暇、あるの?