ガースーが2050年カーボンニュートラル宣言をしたことから、内閣府が「再生可能エネルギー等の規制等に関する総点検タスクフォース」を設置。
専門家と事業者と役所で議論がなされている。
公式サイト
https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/conference/energy/e_index.html
この第24回会合がオンラインで公開されており、電気自動車の充電インフラに関して議論がなされている。
専門家の提言に対する国交省の発言(言い訳)が面白かったのでメモ。
資料
https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/conference/energy/20221111/agenda.html
動画
冒頭に専門家からプレゼンがあり、役所側から答弁兼プレゼンがあり、最後に専門家が役所に質問するというもの。
全体で1時間しかなくて、プレゼンが6件くらい入っていたので、説明や質疑応答の時間が足りない。
(24回も開催しているのに内閣府はアホなのだろうか。2、3回に分割しろや・・・。)
さて、専門家のプレゼンはEV乗りならどれもその通りだよなという内容で、目新しさはない。
安川氏は主張が過激だし、大学教授は時間の関係で主張を抽象化し過ぎていたが、主張は似通っている印象。
充電インフラ整備で最も大事なのは、自宅充電(既存マンション)と経路充電(高速道路SAPA)
・マンションへの充電器設置は現行法令では管理組合での意思決定など、手続きのハードル高すぎて進まない。政府による対応が必要。
・高速道路上の充電器が低速で1基しかなく頼りにならない。政府による対応が必要。(設置数の目標と補助金出して、後は現場にぶん投げでは進まない)
何がネックとなっているのかについても専門家の見解は一致している。もう10年も同じ議論をしていて出尽くしている。
・区分所有法上求められるマンションへの充電器設置の手続きのハードルが高すぎる。希望者が自費で設置する場合の手続きを簡素化すべき。
※他国のように、利用者が自費で設置する場合は管理組合は拒否できないようにするなど、合意形成の手続きを不要にすべき。(じゃないと進まない)
・高速道路上の急速充電設備が無計画すぎる。拡張性もないし、工事費も高くなるような場所に設置してる。性能、基数の基準や計画を作ってフォローしていくべき。
※アメリカのように、補助金対象となる充電器の条件を詳細に定義すべき(じゃないとゴミ充電器が少数設置されて終わり)
面白いのは区分所有法も、高速道路への設置についても、所管は経産省ではなくて国交省なのである。
(マンションへの充電器設置)
・充電器の設置及び管理は集合住宅住民(ガソリン車保有者、車非保有者を含む)全員の理解を得て進める話でハードル高い(から仕方ない)
・区分所有法は私人同士の権利関係を整理したものなので政策目的を入れ込むのはハードル高い(からやりたくない)
(高速道路への充電器設置)
・SAに土地がないのでハードル高い(から仕方ない)
・高速道路から充電のために一般道降りられるようにしてほしいについては、充電したのか調べるのがハードル高い(からやりたくない)
最後に、「国交省としては経産省が充電器を設置していくためのお手伝いをしていきたい」と、充電器設置が進まなかった場合はオレの責任じゃないよアピールも欠かさない。
これを見てて笑ってしまった。国交省があまりにも無能すぎてピエロ状態なのである。
この議論、10年以上やっている話だし、他国で成功した政策もたくさん出てきている中で、できない理由をドヤ顔で繰り返している場合ではない。
さすがに専門家からツッコミが入っていた。実際には気を遣った丁寧な表現だったが、意訳。
(国交省へのツッコミ)
・国交省は経産省のお手伝いじゃなくて、国の方針としてカーボンニュートラルと打ち出してる以上、充電器設置の結果責任を負う立場であると認識しろ。
・できない理由ばかりではなく、どうやって目標実現するか考えて実行するのがお宅の仕事だろう。
(マンションへの充電器設置難しいへのツッコミ)
・充電に関係ない人の合意形成すべきというが、ガソリン補助金やった時にEVユーザーに意見聞いたのか?そんなことしたら絶対に通らなかったはず。それと同じことを一般ユーザーに求めている。国交省の政策がダメなのをユーザーの責任にするな。
・マンションに充電器が設置されればEV持ちたいという人もいる。EVを持たない人の合意形成を言い訳にサボるべきではない。
(高速道路への充電器設置へのツッコミ)
・SAにスペースがないじゃないのは専用スペースを新設しようとしているからで、そんなものは不要。
・既存の駐車場の1番遠くの空いている場所に充電器を複数基つけてガソリン車と共用利用すれば専用スペースの確保は不要。
で、時間がなくなり閉会。
国交省はあまりにも無能だったが、今の人が無能というより、10年前からの主張を繰り返しているにすぎない印象。
10年前といえば、日本も世界もカーボンニュートラル宣言をしておらず、欧米もガソリン車販売禁止とか決めてない時代のものである。
それをいまだに同じ主張をするのは呆れてしまう。危機感がまるでない。
本件の所管は経産省なので国交省としてはぶっちゃけどうでもいいというのが伝わってくる。
経産省は産業政策的に日本でEVが普及しなければ日本の自動車メーカーが競争力を喪失してグローバル競争で負けるという危機感を持っている。
一方、国交省は、別に日本の自動車メーカーが潰れても自動車が無くならなければ道路が利用されるし問題ない。
まずいのは、区分所有法や高速道路の政策は国交省が所管しているということ。
つまり、やる気ない奴がEV政策に重要な影響力を持ってしまっているということ。これは絶望的な感じがする。
縦割りを打破して国交省に責任を負わせなければならないが、岸田政権には期待できそうにない。ガースー復活して・・・
おそらく、2030年にも国交省は「マンションではEV非保有者を含めた合意形成が難しい」「高速道路は土地がない」と言っていると思う。
2050年でも、「国交省は経産省のお手伝いをしてきたが、インフラ整備は進まなかった。結果責任は経産省だけどね」と言っているだろう。
こうなってくるとやはり、自動車メーカーが主導して充電網を整備しなければならないし、充電インフラを整備する気のないメーカーのEVは買えなくなってしまう。
今後、国交省が本気出すこともあるのかもしれないが、少なくとも現時点ではこんな感じである。
なぜ、欧米では巨大な充電ステーションができたりしている中で、日本の充電インフラって10年前からほとんど変化していないんだろう?と疑問に思うことがあったが、納得いった。
また、内閣府や経産省も公開議論でやる気ない国交省を吊し上げて、危機感持たせたいというところなんだろうなと。(持ってないだろうが)