日経がトヨタ初の専用設計のBEVであるbz4Xについて、販売を行わずサブスクで提供すること、日本への供給数を絞ることなどを報じた。(リークですな)
トヨタ初の量産EV、国内は当面販売せず サブスク限定で
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOFD17B990X10C22A2000000/
トヨタ bZ4Xの販売はリースのみ?ディーラー内でささやかれる噂を考察
https://car-moby.jp/article/automobile/toyota/bz4x/forecast-on-bz4x-sales-feb2022/#BEV
昨年、メガウェブでBEVに関する発表を行い、
「bz4Xは2022年央に発売するぞ!そこから得意の毎年複数モデル投入じゃぁぁぁあ!!」
「ディーラーへの充電器整備はちょっと遅れるが、2025年までには完備するで!!」ということで期待が高まっていた。
アリアに後出しするからには価格が安いとか強力な発表(150kW充電網の整備計画とか、強力な自動運転機能とか)を出してくるんだろうなという期待もあった。
と思ったら、KONOZAMA。日経のリーク記事なので、「観測気球でしたがやっぱりやめました」となるのを期待しているが、記事内容はいかにもありそう。
というのも、トヨタにとって日本市場はハイブリッドを買いまくってくれる重要な市場であり、BEVを売るインセンティブがまるでない。
ハイブリッドの販売規制はなく、純粋なガソリン車に規制が入ることでハイブリに追い風が吹く。
海外ではハイブリ含めて販売規制が入る中で、自ら日本でEVが売れやすい環境を整備しても敵を利するだけ。非合理的な行動である。
ハイブリが規制される海外市場へ優先的に投入してBEVブランドとして認知されないと、今後、全く売れなくなってしまう。実際、トヨタはBEVの販売台数ランキングに全然入ってこないので、EVに対して後ろ向きなメーカーとして批難されることが多い。
電力の構成ガー、充電網ガー、集合住宅の充電器ガーと、できない理由を他人のせいにしていれば、「トヨタはEVに本気です!!が、日本では環境が許さないんですよねー辛いわーてへぺろw」と言い訳できる。通用するのかは知らないが、トヨタ信者だけは信じる。ちょろい。
国内はずっとハイブリでも誰も文句は言わない。トヨタのEVを期待している極小数の人(ぼく)を除いては。
海外でも似たような課題がある中で、関係者の地道な努力(再エネ普及、急速充電網の整備、充電器設置に関する規制緩和等)で状況を少しずつ変えようとしている。
日本でも再エネ増やそうとしているし、日産やイーモビリティパワーが充電器設置を頑張っているし、テスラやポルシェは専用充電網を作っているし、最近ではマンションへの充電器設置をサポートする業者も頑張っている。
環境が悪いなら、他人のせいにせず、自らの努力で変えるんだということである。恵まれた環境はいきなり生まれてきたわけではなく、状況を少しずつ改善する努力をしている人が実際にいるんだということだ。
テスラはアメリカを横断できるスーパーチャージャー網を構築したし、VWは欧州やアメリカに急速充電ネットワークを構築した。日産は日本全国に充電器を設置した。
一方で、トヨタが主導しなければ日本のインフラ整備はなかなか進まないのも事実であろう。
日産はEV黎明期に頑張って充電網を整備したが、リーフに続くEVの投入ができていなかったし、初期に普及したインフラの更新ができておらず、現代のバッテリーが大きなEVには貧弱なインフラとなっている。
ここに70kWhの大きなバッテリー車を投入するトヨタが介入してインフラの刷新をして海外と同等(せめて高速道路上は150kW以上複数基に・・・)のインフラにして欲しいなと誰もが思っていただろう。
日本市場へのBEV投入を絞るのはトヨタ1社だけの都合を考えれば、合理的な判断であるように思われる。
日本ではインフラが貧弱であり、再エネが少なく、電車利用率が高いので都市部は集合住宅が多い。ここに踏み込んでも労多くして利益がない。
しかし、日本の環境を変えられるのも、トヨタしかない中で、「日本はEVが普及する環境が整ってないので、敬遠しまーすw整ったら投入するかもねw」というのは悲しい。
ヒュンダイがそう言うなら理解できるが、トヨタとは立場が違う。
とはいえ、結局、各社の判断は各社が行うことであって、なるようにしかならない。トヨタは現実主義で自社が不利になるような冒険はしないということである。
海外でVWなどが主導して整備した急速充電網を使ってビジネスすれば、固定費を負担せずにフリーライドできるので美味しい。
また、日本市場で本格的に販売できない最大の要因としてはバッテリーの調達力不足が指摘されている。
レクサスブランドや今後販売する車種を含めて数十万台のEVを作るだけのバッテリーが調達できず、販売台数を絞らざるを得ない。
となれば投入する市場の優先順位はつけなければならない。
こうした事情はともかく、ユーザーは今ある外部条件の中で買う買わないを判断するしかないので、2022年に日本でEVを買うのであれば自ら充電網を整備する意欲のあるメーカーから買うしかない。
今のところ、テスラ、ポルシェ、アウディは自ら150kW以上の充電網を整備していくとしている。日産は50kWが中心だが、一応90kWの充電器も増やすようだ。
マンション居住者としては、バッテリーが大きな車を買うのであれば、実質的にこれらのメーカーしか選択肢がないと思う。じゃないと運用が修行になる。
そう考えると、bz4Xを待たずにモデル3をポチってよかったなと思う。「トヨタが本気を出せばEVを出すのは簡単だ」と無責任に言う御用評論家(おデブなど)がいるが、EVを量産をして、日本でもある程度快適に使えるように充電網を整備しながら、ビジネスとしてもプラスになるようにEVを出すのは非常に難しいということだろう。
BEVはメーカーによる出す出す詐欺が多いのも、こういうことで、技術的にプロトタイプを開発するまでは行けても、量産し、充電インフラを整備し、アップデートし、と考えると、赤字になるのでやっぱり出せないということである。
テスラでさえサイバートラックの生産には苦戦していて、納期がどんどん遅れているし、25000ドルの車は開発を停止しているようだ。車種ごとに難度が全く異なるということだろう。デカくて重い車は高額になりすぎるし、小さい車は航続距離を伸ばすのが難しい。
今のところ、日経の記事は信憑性の低いリーク記事だし、2025年のディーラーへの充電網整備は撤回されていないし、RZ450eを春に発表するというのも変わっていないのだからまだいけるかと思っているが、合理的に考えたらトヨタは日本でEVのインフラを整備しない方がプラスなので、2022年にトヨタからEVがどんどん出てくること、インフラが整備されることは期待できないんじゃないか。
なお、政府の補助金を使って急速充電器を整備すると、その事実が公表されるが、今のところ日産ディーラーばかりが申請していてトヨタディーラーの申請はほとんどない。
少なくとも、2022年時点においてはトヨタによる本気のEV投入、充電網の整備はなさそう。(トヨタブランドよりも早く、100%BEVブランドにするんだとぶちあげたレクサスのディーラーだけは充電器の設置を先行するかもしれないが)
個人的に、bz4Xのソーラーパネル積載とステアバイワイヤはすごく楽しみだったので、2022年でなくてもいいから日本に来て欲しいものだ。
トヨタが合理的に日本市場を後回しにすることを決定したように、他国のメーカーも合理的に考えたらEV後進国の日本を後回しにして、中国、欧州、米国への投入を優先させるはずである。そうなると、優れた車や技術が登場しても日本への導入は遅れる。これをさせないために、日本市場をガラパゴス化させず、インフラ整備競争で負けないことが大事だと思う。
日本の集合住宅には充電器がないし、一般道には充電ステーションがないし、高速道路上も50kWが最大だよ、となったら、トヨタだけでなく、誰がどう考えたって後回しにするだろう。