ファーウェイが昨年末、AITO M5というレンジエクステンダーEVを発表していた。
日本ではさらっとしか報道されなかったので、スルーしてたが、とんでもない発表内容であると感じたのでメモ。
https://www.huawei.com/jp/news/jp/2022/huawei-launches-new-products-for-a-seamless-ai-life
AITO M5の概要
・ファーウェイと中国のメーカー(SERS)が立ち上げたスマートカーブランド
・40kWhのバッテリーと発電用のガソリンエンジンを併用することで、最大で1200km以上の航続距離(ハイブリッド車並みの航続距離)
・0−100kmを4.4秒で加速(EV並みの加速性能)
・ガソリンエンジンは発電用であり、動力としないのでエンジン音は静かで燃費も安定
・ファーウェイのハーモニーOSを車載、スマホ、家、車をネットに接続(コネクテッド、スマート化、AI活用・・・)
・価格は日本円で450万円から(四駆でも500万円から、ハイブリよりは高いがEVより安い)
・中国で予約開始済み
ファーウェイが生産する訳ではなく、裏方に徹するということだがハーモニーOSのデモなんかを見ると、ガッツリファーウェイである。
内装はテスラの丸パクリといった感じ。
面白い点は他社のようにBEVではなく、レンジエクステンダーEVであること。
発表されたスペックを見ると、ガソリン車のダメな点(低速での加速が遅い、加速するとエンジン音がうるさい、アイドリングがうるさい)
とEVのダメな点(航続距離が短い、価格が高い)をうまく消して、いいとこ取りしているように見える。
低速でもドッカン加速するパワーがあり、モーターなので加速しても静かで、航続距離がEVでは実現不可能なほど長く、
それでいてそこそこ安く、電池がたくさん積んであるので、EVならではの各種機能(コネクテッド、エンタメ等)も使い放題・・・
PHEVのように、モーターでもエンジンでも走れる車は電池が切れたらうるさくて非力なガソリン車になってしまうが、
レンジエクステンダーにすることで、電池が切れても加速力に優れつつ、静かに走ることができるとしている。(実車は提供されていないので、言ってるだけで実際はわからない)
レンジエクステンダーEVは今までにもあったが、高速域での燃費が悪すぎて、あまり流行していなかったようだ。ここをどのようにクリアしたのだろうか。
レンジエクステンダーの弱点をある程度消すことができているなら、これは現在のインフラ事情や自動車の販売規制を見ると、最も現実的なソリューションに見える。
バッテリーのイノベーションで価格が下がったり、充電インフラが十分整備されればBEVは弱点がなくなるが、現在は価格が高く、充電インフラもイマイチである。
かといって、一度EVに乗ってしまうと踏んでも加速しない、エンジン音がうるさいガソリン車はストレスである。(そして、パワフルな車はうるさく燃費も悪いという宿命)
レンジエクステンダーとBEVとの違いはCO2を排出するということだろうが、そんなもの自動車評論家以外は誰も気にしていないのが現状である。
さて、あえてレンジエクステンダーを採用したことも驚きだったが、もっとも衝撃的だったのは、ハーモニーOSを車載したということである。
プレゼン動画を見ていると、ファーウェイのハイエンドスマホのようなサクサク感で車の各種機能を使うことができている。
ファーウェイのスマホを使ったことがある人ならわかるだろうが、ハイエンドモデルは素晴らしいものである。これが車にも載ったらかなりやばい。
ヌルサクじゃない車はストレスになってしまうし、タッチ操作や音声操作もスマホ並みのクオリティが求められる。
ファーウェイ自身が「今後の基準となるスマートカー」と言っているように、スマートカーというジャンルはこうなるぞというモデルである。
テスラが、ソフトウェアファーストの車づくり、ミニマリズムの内装、ぶっ飛んだ加速力、自動運転機能、スーパーチャージャーなどでEVとはこういうものだという基準を示したが、
さらに現実的に洗練された感じになっている。
今見ているのはファーウェイのプレゼンテーションや宣伝用の動画であるので、過剰広告で現実との乖離があるのかもしれないが、レンジエクステンダーという方法を使って、航続距離1200km(実測では3割引くらいか)、0−100km4.4秒、450万円(4.4秒のやつは500万円?)というスペック番長ぶりを実現したことには戦慄が走るし、ハーモニーOSを車載したということでこれから爆発的な進化が行われることになるだろうから、これはとんでもないニュースである。
個人的には、レンジエクステンダーで搭載される発電用エンジンの騒音や排気ガス、レンジエクステンダー機構による重量の増加、座席や荷物室容量の制限、日常の運用イメージ(ガソリンの補充と充電が必要なのはどの程度面倒なの?)は気になるところだが、このスペック番長ぶりと安さ、そして何よりすでに予約開始できているということは、衝撃的であると思う。ソニーはともかく、トヨタのbz4Xだってあれだけぶち上げておきながらまだ予約さえ開始されていない。
ぼくは自分の用途ではテスラに満足しているが、それは近くにスーパーチャージャーがあり、主に週末利用だからであって、一般的にはまだEVはマンション民には不便なものであると思う。他のメーカーもスーパーチャージャーを設置するならBEVもいいと思うがその意欲はなさそう。その状態で今のEVは航続距離が短すぎるか価格が高すぎると感じる人が多いはず。より広い層に受けるためには、航続距離を伸ばしながら価格は下げていかないといけない。
現在アナウンスされている各社のSUVのEVは価格を500万円程度、航続距離500kmを守るために加速力を犠牲にしているものがあるが、それも退屈なのでよろしくない。現実的なソリューションとしてレンジエクステンダーは今の時代にあっているし、さらにサクサクのOS(つまりソフト)もあるとなると非常に魅力的に感じる。多くのEVは不安だなマンもレンジエクステンダーなら不安なく運用できるはずだ。そして加速力などEVのメリットを享受することができる。
中国のメーカーは、先行者を徹底的にパクるのが特徴だが、あるタイミングで本家を凌駕してぶち抜いていくのが恐ろしいところである。今回、そのぶち抜く瞬間なのではないかと感じた。
ほんまかいな?という人はYouTubeでAITO M5で検索すると動画が色々出てくるので見てみたらいいと思う。(プレゼンを日本語で解説してくれてるやつもあって大変ありがい)