CESでの発表
2022年1月5日、ソニーがCESでEV事業への参入に向けて本格的検討に入ると発表した。
ソニーはVision SというプロトタイプEVを制作しており、走行実験、5G接続実験、オンラインアップデート実験ほかいろいろな実験をドイツで行っていたようだ。
これまでは、「EVには関与するが、ソニーがEVを量産することはない。命に関わる事業は怖いねん。」という立場だったが、
試作機への反響が大きく事業化に向けた本格検討に入ると説明。(はっきりせい)
先進国では脱炭素ムーブメントを受けてガソリン車を販売禁止して、ハイブリ、PHV、EVへの切り替えを図っていこうという流れがある。
国や地域によって時間軸と規制内容は様々だが、イギリスではガソリン車とディーゼル車を2030年までに販売禁止し、ハイブリッド車についても2035年までに販売禁止するという。
本当に実現できるのかは怪しいが、少なくともこの脱ガソリンの流れが逆流することはなく、2030年や2035年が近づくにつれて新車販売に占めるEVやPHVの販売比率はどんどん向上していくことが予想される。
中国ではEVメーカーがどんどん誕生しているし、欧州メーカーは2030年や2035年にEV100%にします宣言をするメーカーが増えているし、ホンダも100%EVにすると言っているし、つい先日もトヨタがレクサスを100%EVブランドにするとぶち上げている。価格制約の緩い高級車は全てEVになりそうだ。(安いEVを作るのは難しい)
CESでは、VisionS2というSUV車が披露された。ぱっと見の完成度も高く、コンセプトモデルではなくプロトタイプといった感じだ。実際に、彼らもそのように整理しているようだ。
日本ではすでにハイブリがあるので全くそんな雰囲気はないが、2010年からの10年でガラケーがスマホに置き換えられたように、2020年からの10年、15年はガソリン・ディーゼル車がEVやPHVに置き換えられていく可能性が高い。(というか、多くの地域で販売禁止されるから置き換えざるを得ない)
この環境変化に対して、ソニーは自らは量産しないけど、カメラとかエンタメとか使ってもらいたいな(チラッチラッ)と言っていて、スマホのイメージセンサーと同じでメガトレンドに必要不可欠なパーツを握って美味しいところを取っていこうという狙いと見られていた。
が、今回のCESではソニーモビリティという会社を立ち上げて自ら事業を行っていくことを念頭に本格的な検討に入る(参入するとは言ってない)とした。
オレのソニー論
本格的な検討に入るってなんやねんという感じだが、平井CEO時代以降のソニーはそれまでの路線とは全く異なりかなり慎重にビジネスを進めるようになっている。
売上重視から利益重視へ、縦割りを排除して事業間の連携・整合性重視へ・・・
元々、ソニーは新技術に着目してまだ小さい市場に対して果敢に突っ込んでいく特徴があった。MP3プレイヤーやミラーレスカメラなど。
が、戦略が弱く、革新的商品の一発屋でその後が続かないということが繰り返されてきた。
そういう新ジャンルのワクワクする冒険的な商品を「ソニーらしい」商品と呼んでいたが、その後明らかに方針を転換し、利益が出るような市場に利益が出るような商品を投入するようになってきた。例えば儲からない低価格の商品は出さないとか、ヒット商品はデザインを大きく変えずにブランド化を図るとか、地道なことをやってきた。
こういう動きを見てソニーらしさが失われてつまらないという評価が多かったが、業績が回復し持続時的にイノベーションを起こしている姿を見て、世間の評価もてのひら返しである。
ソニーは戦略的になった。優れた商品を出しても商品間の連携がなかったり、別IDで管理されていたりムカつく独自規格があったりしたのだが、そういうものが無くなった。
身の丈戦略も上手で、サムスンやLG、アップルと戦っても勝てないところはさっさと諦めて、取れるところだけでしっかり利益を取る作戦になっている。Androidに変わるOSを作るぞ!とか勝ち目のない戦いはしない。市場シェアを持っていないようで、利益はしっかり取る作戦である。で、どうしようもない事業からは撤退。
ソニーのEV参入はどのようになるか
ソニーがEV参入を正式に決定したとして(まぁするだろう流石に)、どのような方法になるだろうか。
低価格のEVは簡単には作れないことは先人たちが散々証明している。また、大量生産の難しさも然り。
となると、普通に考えると生産台数は絞り、価格は極めて高く手作りのような高価格EVから市場に参入し、売れ行きを見ながら外注を内製に切り替えたり、工場を立てたりして量産効果でコストを低減し、徐々にマスに向かっていく、テスラ戦略が1番現実的であろう。いきなり500万円の車を作るのはハードル高すぎる。それは自動車メーカーだからできること。
また、参入市場も日本のようにハイブリ天国でEVのインフラがクソな市場ではなく、ハイブリ車を含めた販売禁止を掲げている欧州、EV市場が大きい中国などが優先され、
その後はインフラの整備に巨額投資をするアメリカ、そしてその次に(その頃市場の状況が良くなっていれば)日本となってくるはず。
新会社は日本に本社を置くとのことだから、ワンチャン試験的に日本に最初に投入させることはあるかもしれないが、非売品価格になると思われる。
まぁこれは定石なので、そこを覆してくれることをぼくは期待している。