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住宅ローン減税の見直しってどうなの?

日経に面白い記事が出ていた。

 

住宅ローン減税「1%控除」の妥当性

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO64445990Q0A930C2EE8000/

 

主旨としては、

・2021年度の税制改正で住宅ローン減税の延長について議論される予定である(既報のとおり)

・一方で、低金利下で1%の減税が妥当なのか会計検査院が問題視している

・1%を下回る金利で借りている人が8割であり、借入する必要がなくてもあえて借り入れを行った方がサヤがとれる

財務省の役人は「支払った金利の範囲内で控除するという案もあり得る。低金利時代にあった控除水準に引き下げるべきだ。」とコメント

 

住宅ローン減税の本来の目的

 

そもそも、住宅ローン減税は何のためにあるかというと、住宅を買えなくて困っている人の経済的負担を下げることで、持ち家の取得を促そうという政策であり、経済的余裕のある人も含めて税金を還付するためのものではない。このため、所得制限(3000万円)が設けられている。

 

住宅を購入すると家具家電を買うので、経済波及効果が大きいという説があり、政府が税金で特定の業界を後押しするというやや異常な状態である。住宅ローン減税は所得税、住民税からの還付であり、所得が小さい人は恩恵が少ないので、住まい給付金という制度もある。

 

持ち家を取得するとローン完済後は住宅費が小さくなるため、生活が安定する。住宅購入は貯蓄形成のようなものでマクロで見た時にも意義があると思われる。

 

住宅ローン減税の様々な問題点

 

会計検査院は、「本来、住宅を購入する余力がない人を後押しする制度であるのに、金持ちが現金を手元に残してあえて借り入れを行って減税をとるような行為をしていて問題があるのではないか?」と指摘している。

 

ただし、これは少し違うのではないではないかと感じる。そもそも、住宅ローン減税の意義は住宅取得にかかる消費税相当額を後から還付しようというものであった。住宅ローン金利はあまり関係ない。金利が上がってもローン減税は拡充されることはないし、金利下がっても改悪されることはなかった。一方で、消費税が引き上げられる際にはローン減税は拡充されたし、新築よりも中古(個人間売買で消費税がかからない)の減税は渋くなっている。ここは財務省も承知しているだろうが、あえて知らないフリをして「金利が下がったからローン減税を改悪しても良いだろう」とするのだろうか。あまりフェアではない。

 

それよりも、別の問題がある。減税額が大きすぎて、消費者行動を歪ませることである。まず、新築と中古で最大年40万円、20万円と違ってくる。これは新築を優遇していると言える。固定資産税の当初減免、修繕積立金の段階値上げ方式と合わせると、新築と中古の維持費の差が年50万円、60万円違ってくる。これが中古市場の成熟を妨げている。

 

また、減税額が大きすぎるので、ズル賢い人は、「10年ごとに買い替えて常に減税を取るべきではないか?」と考える。いわゆる沖式サーファーである。10年で売却する前提では建物の長期的な管理など興味はもたないので、修繕積立金の値上げには反対(売り抜けるまでは)というのが合理的な行動になる。買い換えるのは勝手だが、税制で管理不全に陥る行動のインセンティブを生んでしまっているのはまずい。

 

さらに、制度が複雑すぎることもよくない。3000万円控除とローン減税は一時期は一定条件下で両方利用することができたが、現在は買い替え時にはどちらか選択することになった。譲渡益課税の減免とローン減税(消費税の還付)は全く性格が異なるが、これを2つ並べて有利な方を選べというのは制度として複雑すぎる。知らないうち(または故意)に両方を使って国税から指摘される人もいるが、これはルールが悪すぎると思う。併用可能にするか、廃止するかどちらかにしたほうが良いだろう。現実的には両方を縮小して、併用可能にすべきではないか。さもないと、「どちらが有利か?」という判断をしなければならなくなる。

 

また、全国一律の制度が東京の実情に合っていないこともある。東京のマンション市場は寡占化が進み、供給が絞られ、競争が十分に働いていない。同じ地域に複数の物件が供給されている時代は比較検討されて競争が働いていたが、現在は同じ地域に複数の物件があるという地域は限定される。この結果、新築が欲しい人は購買力の限界に近い価格で購入するようになったし、デベロッパーは購買力を見て価格を設定することになった。

 

つまり、住宅ローン減税が拡充されて購買力が増えれば、それをそのまま価格に上乗せして値上げするだけである。税金でデベロッパーに補助金を出しているのと同じであり、政策的な意義はない。住宅ローン減税を廃止すれば購買力が落ちるので、購買力で値付けしているマンションの価格は下がると思われる。

 

郊外のように戸建てが常に供給され地域内で競争が発生している地域と、都内のマンション市場のように寡占化が進み、供給が絞られて競争が十分に働いていないものを同じ制度で適用することは政策として雑すぎる。

 

どうしていけば良いか

ぼくの考えるさいきょうの改善案はこちら。まぁこれらは例であり、変なインセンティブをなくしていくことが必要だと思う。

 

・中古と新築の減税を揃える。→新築優遇をやめる、買い替えメリットを減らす

・ローン減税の上限を下げる。→消費行動への変なインセンティブを減らす(額が小さければ減る)

・譲渡所得控除の上限を下げる。→消費行動への変なインセンティブを減らす(額が小さければ減る)

・固定資産税の当初優遇は廃止する。→新築優遇をやめる、買い替えメリットを減らす

・ローン減税と譲渡所得控除は併用可能にする。→複雑さを解消する

・ローン減税の期限(10年)を無くす。または伸ばす。→長期的な維持管理に対する補助と位置付ける

 

なお、住宅ローン減税が縮小すれば、ローン減税を当てにしてマンションを買おうとしていた人にとってはショックであろうが、そもそも時限がある法律であるし、減税がなければ買えないものは買うべきではないと思う。購入時にローン減税が維持されていても、購入後、ローン減税が改悪されれば中古相場も下がると思われる。

 

これ、財務省がどこまで改悪しようとしているのかわからないが、現行の半分になればそれなりに影響は大きいと思われる。狂気の坪400万円マンションはペアローンでローン減税を最大に取ることを前提にしている価格(80平米10000万円)もあり、影響が出てくるのではないか。

 

ローン減税が無くても狂気の坪400万円マンションしかもエリア史上最高値を買うだろうか?まぁ、買う人もいるだろうけど、ふつーは買わないんじゃないかな。

 

 

追加

会計検査院が何を問題にしているのか、伺える資料があった。

https://www.jbaudit.go.jp/report/new/all/pdf/fy30_09_02.pdf

 

この中で、住宅ローン減税を受けてから売却すると3000万円控除も受けられるのはおかしいと書いてあるので、3000万円控除についてもなんらかの見直しが入る(ローン減税とってから買い換えて3000万円控除を取れないようにする?)と思われる。