湾岸タワマンを買おうとしたら、保守的な実家の両親から「災害が心配だからやめろ」と反対されたという話をよく聞く。
昨今、湾岸タワマンの相場は新築で坪400万円、中古(築10−15年)で坪330万円程度であり、まぁ高い。
高いものを買うのに災害が心配だと考えるのは当然である。
私は10年くらい湾岸に住んでいるので、実体験も踏まえつつ湾岸タワマンって災害に対してどうなの?について書いていきたい。
(1)洪水(大雨、台風、高潮)
タワマンの電源設備は地下にあることが多く、地下に浸水すると設備が使えなくなることがある。
武蔵小杉の一部タワマンの地下が浸水して、エレベーターの停電が発生したことを覚えている人がいるだろう。
しかしながら、湾岸の場合、排水能力が高いので水害には極めて強い。台風や高潮で被害が出ることは基本的にない。
内陸部の場合、短時間に雨が降りすぎると排水能力の限界を超えて路上に水が溢れたりするが、湾岸の場合は海に排水できるため能力の限界が高い。
私は最強台風と高潮が重なった時、水門の外にある品川埠頭がどうなるのか、ライブカメラで見ていたが、道路に水溜りすらできなかった。
品川埠頭はコンテナ基地があるので、仮に浸水したら商品が被害を受ける。また、火力発電所もあるのでエネルギー供給に問題が生じる。
そうならないよう、高潮に対応した高さになっており、排水の仕組みもしっかりと作られている。湾岸は埋め立てによって作られており、高さや排水については問題にならないように作られている。
湾岸東側についても同様。ただし、仮に荒川が氾濫して、すべての水門が破壊されて、東京駅の辺りまで水に浸かるというような極端な想定では、河川に近い月島や勝どきのタワマン群の1、2階部分が水に浸かることはありえるかもしれない。これはハザードマップを見ればわかるので、最大浸水を確認すると良い。
ただ、基本的には海に近ければ近いほど水害に対しては強い。特に、台場、有明は避難先になっているくらい強いし、芝浦港南も強い。湾岸は道が平坦なこともあり、台風の時も道路がプールにならない。
(2)津波
震災の時は津波に街が飲み込まれる映像をマスコミが繰り返し流していたので、海の近くに対して恐ろしいイメージを持つ人もいるだろう。
ただ、「外洋」に面している街と湾岸エリアのように、「湾」とでは全く事情が異なる。
災害想定を見ればわかるが、東京湾では大きな津波が基本的に発生しない。内側が広がっているので、減衰していくようになっている。
また、東京湾は浅いため高い津波が起こりえない。お風呂で波を起こすとそれなりの高さになるが、お盆に水を張って波を起こしても高い波は起こせない。
震災の時も湾岸エリアが津波により浸水された、ダメージを受けたということはないので、まぁ津波被害はそんなに気にしなくていいと思う。
なお、海が近いことによる塩害を指摘する人もいるが、これも外洋と湾岸では全く異なる。
湾岸の古い建物でも塩害で痛んでいるものなんて見たことがない。
(3)火災
幸い、日本ではタワマンの火災で悲惨な事例はないが、海外では一棟全焼したという事例も出てきている。日本の対火災の規制が厳しいということだろう。
私は海外でタワマンが火災になったのを見たことがある。15階くらいの高さの部屋だったので、大きな消防車が水をかけていた。
上下左右の部屋が多少焦げてはいたが、生活には支障がないレベルのようだった。また、半年くらいして綺麗に直していた。
タワマン火災においてこのくらいの災害は起こり得るが、命が危険になるレベルではない。
低層マンションや戸建てはタワマンに比べて公開空地が少なく、ぎっしりと建てられているため、火災リスクは高い。
大規模な火災が発生する場合、一帯が全焼することもあり得るし、道が狭くて消防車が入れないなどもあり得る。
公開空地が大きく、燃えにくいタワマンは一般的には火災に強いといえると思う。少なくとも生活していて火災に遭遇したり恐怖を感じた瞬間はない。
(4)風害
台風などの強風時にタワマンが揺れるとか風の音がうるさいとか窓が開けれられないという話を聞くが、私の経験上は非居住者によるデマであると思う。
1階がビル風で強風でも高層階にいくと無風のこともあるし、窓が開けられないなんてことはない。
台風後の超強風の時、窓ガラスや換気扇が音を立てたことはあったが、1年に1回か2回くらいだ。あまり気にしなくていいと思う。
タワマンが風で揺れるというのは、タワマンで炊いた米はまずいレベルのフェイク、ヘイトである。冷静に考えて、体感できるほど揺れるわけないだろう。
丸の内の高層オフィスはいつも揺れてるのか?ってこと。
(5)停電
台風や大規模な地震が発生すると停電が生じることがあるが、タワマンの場合は長時間の停電が発生したとはほとんど聞いたことはない。
湾岸の場合、ライフラインが地中化されているため、電線が切れるということがないためであろう。
一方で、停電はなくともエレベーターは止まることがあるし、復旧に時間を要することはある。
また、余震があるのでエレベーターに乗るのが怖いということもあろう。
エレベーターが止まるという問題については、タワマン居住者にはついてまわる問題である。
これが許容できないなら、低層階に住んだ方がいいと思う。
震災後の湾岸タワマンでは、エレベータ停止が恐ろしくて高層階にパニック的な売りが出ていたが、
2年もすると忘れてしまい、また高値で高層階が買われていた。なぜ、みんなすぐに忘れてしまえるのだろうか。
(6)液状化
湾岸マンションの最も懸念する災害は地震に伴う地盤の液状化であろう。
湾岸エリアはハザードマップでも「液状化が発生しやすい、発生する可能性がある」エリアが多い。
これがどの程度のリスクなのかは正直よくわからない。震災の時は目立った被害(窓ガラスが割れるとか)は生じなかったが、
コンクリートにヒビが入るなどの被害が出たマンションは多かったようだ。
ただ、湾岸エリアでも強弱があるし、新浦安で発生したような停電や断水は生じていない。
また、新浦安でも家が傾斜したのは戸建てばかりであったようなので、
しっかりと杭打ちや耐震対策がされている大規模マンションは液状化に強いのかもしれない。
港南では海洋大学のグラウンドが液状化したようだが、これは何も対策がされてない地面なので、マンションは特に目立った被害はないようだった。
今後、首都直下地震のようなものが起こり得ると考えるのであれば、液状化のハザードマップをよく確認したらいいと思う。
(7)騒音
災害ではないが、火災や水害よりも騒音被害の方が気になる。
特に品川や天王洲は羽田新ルート、モノレールなどがうるさいし、三田、田町ではJRがうるさいし、有明では首都高がうるさいなど。
道路がうるさいところでは排気ガスも気になる。音については感じ方が人それぞれなので、気になる人は避けたほうがいいと思う。
以上、まぁ液状化や騒音などそれなりに気になることもあるが、風で揺れるとか塩害とかデマに近いものもある。
10年くらい住んでいる中では、災害で身の危険を感じたことはないし、停電などもないし、避難所に行ったこともないので、まぁ大丈夫かなと思っている。
内陸部の高台では液状化は安心かもしれないが、火災の広がりや電信柱が倒れて道を塞ぐなどが怖いので、
自然災害が多い日本においてはリスクゼロなものはないんじゃないかと思っている。
避難場所を確認する、ハザードマップを見て備蓄をするなどの対策をとったら、あとはまぁあまり気にせずに生活したほうが精神衛生上良いのではないか。