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マンション、投資ネタブログ

実用品としての新築マンションの死と中古マンション市場の勃興

都内の新築マンションは価格上昇が続いており新築マンションでは坪400万円程度が「標準」になってきた。

(ブランズタワー豊洲、千住ザ・タワー、ドゥトゥールの売れ残り物件など。なお、ブランズタワー芝浦はなぜか坪500万円強。。)

 

中古マンションも高騰しているが、頭打ち感があり、湾岸エリアでは築10〜15年で坪330万円程度で取引されている。

今のところ、ファミリーサイズの2LDK〜3LDKで7000〜8000万円ぐらいがグロスの限界なのだろう。(70平米〜80平米程度)

これ以上の価格だと、よほどわかりやすい魅力(駅距離、広さ、高層階、眺望など)がないと厳しい。

 

賃料も上昇しているものの、新築価格の上昇に比べて賃料の上昇は遅いため、新築マンションの利回りは低下している。

湾岸エリアの場合、以前は新築マンションの利回りは5%以上、条件の良いものは6%以上あったが、今は4%台の物件が大層だろう。

 

 

現在は坪400万円程度が標準と書いたが、コロナバブルで坪500万円程度まで相場が上昇するかもしれないと思っている。

 

株式市場では業績予想が悪くても、減配でも、景況悪化でも、場合によっては大赤字でも株価が上昇している。

中央銀行と政府がバックにいるため、リスクプレミアムが低下しているということだろう。

理由はともあれ、投資家が求めるリターンが低下している。

 

株式市場と同様に「以前よりも利回りが低くても許容される」という変化がマンション市場でも起これば、新築マンションの利回りは3%台でも許容されるかもしれない。これにより、賃料が大きく変わらなくても、金利が下がらなくても、物件価格だけがどんどん上がるということはあり得る。

 

コロナバブルで23区の新築マンションは坪500万円が標準になったとして、70平米の物件は10606万円である。

こうなると、買える人は絞られてくるし、頭金や年収が少ない一次取得層には厳しくなってくる。

 

これは極端な例だとしても、このまま値上がりが継続すると、リーマンの共働き世帯にはだんだんと購入不可能な水準になる。

 

すると、バブル期と同じで、「リーマンは23区内にファミリーマンションを買うことはできなくなり、広くて安い住宅を求めて郊外に出ていく」ことになる。

これは十分ありあえる話ではないだろうか。

 

Twitterでも、

「むしろ、都心や都心に隣接する区にリーマンがファミリーサイズの新築マンションを買えたのが異常だったのではないか」

「今後、リーマンが新築マンションを買えなくなるのではないか」

ということを言う人を見かけるし、説得力があると思う。

 

ただし、バブル期は専業主婦家庭が主流であったが、現在は共働き家庭が主流である。

共働き子育て中の世帯にとっては、勤務先に近いマンションは生活を支えるインフラであり、郊外居住が進むことは苦しい。

 

バブル期と違うのは、湾岸エリアなどに多くのファミリーサイズのマンションストックがあるということだ。

以前調べたら、築15年以内、80平米以上、1億円未満の中古マンションストックは多くが江東区にあると分かった。

 

近年、新築価格が高騰しすぎたため、中古マンションを検討する人が増えている。

新築供給戸数が減少し続ける中で、中古マンション流通戸数はジリジリ増加し、新築供給戸数を中古流通戸数が上回ったことは象徴的な出来事だった。

 

このまま価格高騰が継続すれば、この流れはより趨勢的、確定的なものになっていくだろう。

諸外国(特に欧米)と同様に、「都市部においては新築住宅は特殊な贅沢品となり、実用品としては中古住宅が主戦場」になっていくのではないか。

新築マンションは、現在の都市部におけるマイカーのように、「実用品としてはコスパが悪すぎるため、そういうものを無視した嗜好品、趣味的なもの」になっていくイメージである。

 

中古マンション価格は新築マンション価格に連動するところもあるため、「新築が高くても中古なら圧倒的に安い」というものでもないが、

新築価格が上昇し続ける中でも中古価格は頭打ちしているように、中古価格は購買力の限界を超えて上昇し続けるというものでもない。

 

湾岸エリアの新築マンションは相続対策や運用目的で買う人もいるが、中古になると実需(自分で住む目的)が多いだろう。

こうなると、価格は利回り(というか賃貸との比較)や購買力で正当化される価格になる。

 

新築マンション市場の死とは、価格上昇が急過ぎて、近隣住民は「何千万円も追加で借金する割には住宅の質が上がらない(むしろ狭くなり、低仕様になる)から、買い替えない」となり、近隣で賃貸している人は、「明らかに賃貸の方が安いから、賃貸のままにする」という状態である。

 

賃料や購買力を無視してリスクプレミアムの縮小で価格が上昇すれば多かれ少なかれそういう状態になっていくだろう。

 

新築市場の特殊性として、「供給が絞れる」ということがあるため、利回りで正当化できなくなっても価格が暴落するとは思わない。

 

新築マンションは実用品としての役割を終えて、一部の富裕層が利回りを無視して買う贅沢品、嗜好品のようになっていくのではないだろうかと考える。

 

富裕層とはいえ、利回りの低いマンションをポンポン買ってくれるわけでもないので、大規模マンションでは販売は長期化するのが常識となり、5年10年と売り続けるのがむしろ主流になるのではないか。

 

それが悪いというものでもない。空室が5年10年存在し続けるのは資源としては無駄だなと思うくらいだ。(空室には課税強化したら良いのではないか。)

 

価格上昇を前提にすれば、長い時間かけて売った方が業績に寄与することはスミフが証明しているから、他のデベロッパーが同じような戦略を取るのも自然だろう。

 

リーマンを客としないビジネスになることが悪いのか?嗜好品になることが悪いのか?(儲かっとるぞ、文句ある?)について。

 

私から見れば、悪くはないけど、嗜好品になれば買うことはなくなるので寂しい。

 

私は車というプロダクトが好きなのだが、都市部ではコスパ悪すぎて、合理的に考えたら買えないので寂しい。

 

同様に、私は新築マンションは好きだが、新築マンションが価格上昇しすぎて嗜好品となり、コスパ悪すぎて買えなくなれば寂しいと思う。

 

このブログに何度も書いているとおり、私はマンションは実用品だと考えており、特に湾岸タワマンは共働き子育て世帯の実用品として優れていると思う。

 

私は湾岸タワマンを買って生活が楽になったし、家族と過ごす時間も取れており、このようなマンションが妥当な価格で流通していることは大変ありがたいと思っている。

 

価格上昇によって、新築マンションがリーマンの実用品から富裕層の嗜好品になっていくとすれば残念だが、新築マンションの実用品としての死は、代替として、中古マンション市場を勃興させる可能性があると考える。

 

ストックが豊富な湾岸の中古マンションたちは、引き続き、実用品として共働き子育て世帯に利用される可能性が残っていると思っている。