質問箱での質問に関連して、新築vs中古について書いてみたい。
・新築マンションの狭小化、低仕様化、高価格化はドン引きするレベルだが、中古マンションだって値上がりしている
・売買仲介手数料、税制優遇、管理費等は新築が有利である(固定資産税の当初優遇、住宅ローン減税の差など)
・リフォーム費用を考慮したら、同じエリアの新築マンションと価格がそんなに変わらなくないか?
・リセールにおいても、新築の方が有利ではないだろうか?(いずれも、10年後に売却する前提)
まず、以前の記事でも書いたように、新築マンションへの強いこだわりがある人はどんなに高くても新築を買った方が幸せになれる。
新築であることに価値があると考えるのだから中古と比較する必要はない。価値観の問題なので、これも間違いではない。
以下は、新築にはこだわりがないが、中古のリフォームと客観的に比較してどうなのか?というテーマについて考えてみたい。
新築と中古の価格差
湾岸エリアの中古マンションは大体築10〜15年くらいで、坪330万円前後というところ。場所によって多少強弱はあるが。
坪330万円エリアに、新築マンションは坪400〜500万円程度で供給されている。(高くなったもんだ・・・)
坪400万円のマンションが、10年後に坪330万円になるとすれば、下落率は17.5%(1年あたり1.75%)
10年間で25%残債が減少しているため、フルローンでも残債割れにはならない。
さて、中古が坪330万円、新築が坪400万円のエリアでは、70平米なら中古は7000万円、新築は8484万円である。
まぁ場所によってだいぶ違う(新築が高値チャレンジしてる場所とかは新築が高すぎる)と思うので、適宜置換してみて欲しい。
リフォーム費用
リフォームにどこまでかけるのかはその人次第だが、築10年ならフローリングやバスは綺麗なのでリフォームする人は少ないと思う。
リフォーム箇所は壁紙、キッチン、トイレ。
リフォーム費用は壁紙で20万円、キッチンで200万円、トイレで50万円程度。合計300万円弱というところ。
なお、個人的に、キッチンは高さを身長に合わせた方が良いと思うので、リフォームすべきだと思っている。
中古は実質的に7300万円で買ったのと同じ。これに対して、新築は8500万円である。(まぁ、新築もオプションつけるけど)
したがって、新築と中古の価格差は1200万円〜といったところ。これを小さいと考えるか大きいと考えるか。
35年ローンなら、月の支払いでは3万円ちょっとの差である。(数字を小さく見せるテクニック)
新築優遇施策
(1)住宅ローン減税
新築マンションでは、住宅ローン減税の上限が4000万円(40万円)である。ペアローンならさらに倍。
中古マンションでは、上限は2000万円(20万円)であるため、最大で年間40万円の差が出る。10年で400万円。
(ただし、8500万円のマンションでは残債が少ないのでフルローンでも最大まで取れない)
個人的には、この新築優遇策は中古市場の育成を阻んでいるガンだと思っている。
(2)固定資産税の当初優遇
新築マンションの場合、当初5年間固定資産税が半分になる。
湾岸タワマンの場合、固定資産税は20〜30万円というところなので、10万円〜15万円。5年で50〜75万円。
個人的には、この新築優遇策は中古市場の育成を阻んでいるガンだと思っている。
(3)安い修繕積立金
マンションの修繕積立金は、デベロッパーの売りやすさを重視して段階増額方式になっており、当初の金額が必要額よりも小さい。
必要な金額は管理クラスタが細かく比較分析しているが、まぁ新築時の2倍くらいにはしないと回らない。
個人的には、この段階増額方式はマンションの短期売却のインセンティブになってしまい、管理不全に陥らせる要因にもなるためクソだと思っている。
※ただし、一時金方式で多額の積立金を徴収されるマンションもあり、この場合は正味の維持費は中古と比べてさほど安くない。
これらの新築優遇策は気に食わないものの、実際に存在しており、新築は10年で400万円程度は維持費が低くなっている。
新築と中古の価格差は1200万円程度と書いたが、この維持費を考慮すると、差は800万円程度になる。
確かに、この程度の差であれば新築を買うのも悪くないような気もする。
リセールの差も、10年後に築10年の物件の方が10年後に築20年の物件よりも10年間の値下がりは少ないのではないか。
(これについてはデータなし。変わらないという説もあるが、売りやすさで言えば築10年の物件の方が売りやすい。)
中古の利点
リフォーム代や新築優遇施策によってマンションの価格差は縮小し、割高に見えても新築マンションを買うのも悪くないという議論になった。
ただし、中古マンションの利点もある。
(1)即入居が可能
引き渡しまでの期間が短いので家賃の無駄がない。また、金利や優遇措置も早く確定できる。
(2)現物が見られる
眺望、日当たり、部屋の広さ、収納など、実物を見て決められるためミスマッチが少ない。
(3)良い場所に建っている
地価が安い時代に建てられているため、一般的には新築よりも良い場所に建っていることが多い。また、新築がないエリアにも建っている。(当然だが)
(4)個人の事情に最適化できる
保育園については、新築の購入とタイミングを合わせるのが難しい。中古であれば、保育園に入れてから最も近いマンションを買うことができるのでスムーズである。これは子育て世帯にとって非常に大きなメリットである。保育園に近ければ使用価値が高い(=QOLが改善する)ことは確定している。
(5)設備が豪華である
新築マンションはコストダウンが進み、設備がどんどんしょぼくなっている。多くの新築マンションで、エアコンは壁掛け、駐車場の設置率は低い、プールなどの豪華設備もない。必要かどうかという議論はあるが、中古の方が古いものの設備は豪華であることが多い。
というか、今の地価や建築費で、中古マンションと同じものを建てたら価格が何倍にもなってしまうので、企画が成立しない。
結論
新築と中古は価格差があるが、中古はリフォームが必要なことや、新築への各種優遇措置によって、10年間の維持費は新築の方が低いためトータルでの価格差はさほど大きくない。新築が坪400万円、中古が坪330万円程度で買えるエリアでは新築を買うのも悪くない。その際は各種優遇(特に住宅ローン減税)を使い切ることを考えるべきだろう。
一方で、中古マンションには多くのメリットもあるし、そもそも新築がないエリア、新築がチャレンジ価格で話にならないエリアもあるだろう。激安というほどではないが、中古は価格が安いので、その分をリフォームに当てることでQOLは確実に上がる。
「新築であること」に強いこだわりがないのなら、設備仕様、立地、広さなどを重視して中古マンションを買うのも良いと思う。特に、保育園問題を考えれば中古一択であろう。保育園に確実に入れて、かつ、近いというのは圧倒的な価値がある。
結局、何を重視したいのか?という価値観の話になってしまうが、リセールを重視するなら、この程度の価格差なら新築の方が低リスクであろうし、立地や設備を重視するなら中古が有利だろう。